形だけの相談窓口は危険!弁護士が教える利用されるハラスメント対応体制の作り方

1 はじめに

近年、職場におけるハラスメント問題は深刻化しており、企業には実効性のある対策が求められています。多くの企業が相談窓口を設置していますが、その運用実態が伴わず「形だけ」になっているケースも少なくありません。
本記事では、なぜ形式だけの相談窓口が危険なのか、そして真に機能するハラスメント対応体制を構築するために弁護士がどのように貢献できるのかを解説します。

1 形式だけの相談窓口がリスクの温床になる理由

ハラスメント相談窓口が形だけになっている場合、それは問題を解決するどころか、新たなリスクを生み出す温床となりかねません。
⑴ 相談者の不信感と問題の潜在化
勇気を出して相談したにもかかわらず、適切な対応がなされなかったり、相談したことで不利益な扱いを受けたりすれば、相談者は企業に対して深い不信感を抱きます。
その結果、他の従業員も問題を相談することをためらい、ハラスメントが表面化せず、より深刻な事態へと発展する可能性があります。
⑵ 企業の法的リスクの増大
企業には、従業員が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。相談窓口が機能せず、ハラスメントを放置したと見なされれば、この義務違反を問われ、損害賠償責任を負うリスクがあります。実際に、ハラスメントの訴訟では、相談窓口の機能不全が企業の責任を重くする一因となるケースもあります。

2 企業の多くが「窓口を設置しただけ」で止まっている

パワーハラスメントの防止に関する法律が施行されたことなどを受け、多くの企業で相談窓口の設置は進んでいます。
しかし、「相談内容を他人に知られてしまう可能性があるから」「相談しても無駄だと思ったから」「相談したことで不利益な取り扱いを受けると思ったから」などの理由であまり活用されていません。
多くの企業は相談窓口を「設置しただけ」で、その先の運用体制の構築や担当者の育成、そして何よりも「相談しやすい雰囲気づくり」にまで手が回っていないのです。

3 機能しない窓口が招く3つのリスク

設置しただけの機能しない相談窓口は、企業に以下のような深刻なリスクをもたらします。
⑴ 従業員のモチベーション低下・離職
安心して悩みを打ち明けられない、相談しても解決しないという状況は、従業員の企業に対する信頼を著しく損ないます。ハラスメントが放置される職場では、従業員のモチベーションや生産性が低下し、最悪の場合、貴重な人材の離職につながります。
⑵ 法的責任の増大
ハラスメントの事実を認識しながら適切な措置を講じなかった場合、企業は安全配慮義務違反や使用者責任を問われ、被害者から高額な損害賠償を請求される可能性があります。初期対応のまずさや相談窓口の機能不全が、訴訟において企業に不利な判断を下される要因となることも少なくありません。また、ハラスメントが原因で精神疾患を発症した従業員が出た場合、労災認定のリスクも生じます。
⑶ 企業イメージの失墜と社会的信用の低下
ハラスメント問題が訴訟に発展したり、SNSなどで拡散されたりした場合、企業のブランドイメージは大きく傷つきます。

4 弁護士の関与で「信頼される窓口体制」を構築する方法

形骸化した相談窓口から脱却し、真に機能するハラスメント対応体制を構築するために重要なのが、労働問題に精通した弁護士の関与です。弁護士は、法的専門知識と紛争解決の経験を活かし、実効性のある窓口体制の構築を多角的にサポートします。
ハラスメント相談が寄せられた際に、誰が、いつ、何を、どのように行うのかが明確でなければ、迅速かつ適切な対応は不可能です。弁護士は、以下のような点から具体的なフローとルールの整備を支援します。
① 相談受付から解決までの標準プロセスの策定
② 関係者の役割と責任の明確化、連携体制の構築
③ 就業規則におけるハラスメント禁止規定やハラスメント対応マニュアルの作成

5 相談窓口は“設置するだけ”では意味がない

ハラスメントのない健全な職場環境は、従業員の安心感を高め、ひいては企業の持続的な成長に不可欠な土台となります。そのためには、ハラスメント相談窓口を単に「設置する」だけでなく、機能させることが必要です。
今回解説したように、弁護士の専門的な知見を活用することで、法的に適切かつ実効性のあるハラスメント対応体制を構築することが可能です。それは、従業員が安心して声を上げられ、問題が早期に発見・解決される仕組みであり、結果として企業を不要なリスクから守ることにも繋がります。
専門家である弁護士のサポートを受けながら、より実効性の高い体制へと改善していく勇気を持つことが、これからの企業に求められる姿勢と言えるでしょう。

 

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