フリーランス新法
1 はじめに
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス新法)が令和5年5月12日に公布され、令和6年11月1日までに施行される見込みです。
この記事では、フリーランス新法の適用対象や内容について解説します。
2 フリーランス新法の適用対象
フリーランス新法では、フリーランスを、「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」と定義しています。「従業員」には、短時間・短期間等の⼀時的に雇⽤される者は含みません。具体的には、「週労働20時間以上かつ31⽇以上の雇⽤が⾒込まれる者」が「従業員」にあたるとされています。
一般的にフリーランスと呼ばれる方には、従業員を使用している方も含まれる場合がありますが、この法律におけるフリーランスにはあたりません。
ただし、契約名称が「業務委託」であっても、働き⽅の実態として労働者である場合は、この法律は適⽤されず、労働基準法等の労働関係法令が適⽤されます。
3 フリーランス新法の内容
フリーランス新法では、取引の相手方や期間によって内容が変わります。
⑴ すべての事業者がフリーランスに業務委託する際に、以下の①を行う必要があります。
① 書面等により取引条件を明示すること
⑵ 従業員を使用する事業者がフリーランスに業務委託する場合には、上記①に加え、以下の②~④が必要になります。
② 発注した物品等を受け取った⽇から数えて60⽇以内のできる限り早い⽇に報酬⽀払期⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うこと
③ 広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、虚偽の表⽰や誤解を与える表⽰をしてはならず、 内容を正確かつ最新のものに保つこと
④ フリーランスに対するハラスメント行為に対し、ハラスメントを⾏ってはならない旨の⽅針の明確化、⽅針の周知・啓発、相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応などを行うこと
⑶ 従業員を使用する事業者がフリーランスに対し1か月以上の業務委託を行った場合には、上記①~④に加えて、以下の⑤が必要です。
⑤ 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用矯正、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しを行わないこと
⑷ 従業員を使用する事業者がフリーランスに対し6か月以上の業務委託を行った場合には、上記①~⑤に加えて、以下の⑥、⑦が必要です。
⑥ 6か⽉以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両⽴できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をとること
⑦ 6か⽉以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30⽇前までに予告すること、予告の⽇から解除⽇までにフリーランスから理由の開⽰の請求があった場合には理由の開⽰を⾏うこと
4 違反した場合には
適用対象のフリーランス事業者が、フリーランス新法に違反していると考えた場合には、その内容に応じて、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の窓口に申告することができるようになります。
申告を受けた行政機関は、委託事業者に報告をさせたり、立入検査の実施や、指導・助言、勧告等をすることができます。
勧告に従わない場合に出される命令に違反した場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
5 おわりに
フリーランス新法施工後にフリーランスに対して業務を委託する場合には、フリーランス新法が適用される可能性があるので注意が必要です。
業務委託先がフリーランス新法の適用対象かどうかを確認したうえで、規制を遵守する必要があります。業務委託先がフリーランス新法の適用対象かどうかが分からない場合であっても、念のため規制を遵守するのが良いかと思います。
フリーランス新法を遵守するための体制づくりお悩みの会社は、企業法務に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。