偽装請負とは

1.偽装請負とは

偽装請負とは、形式的には業務請負契約を締結しているが、請負人が自ら従業員を使用して請負業務を独立して処理するのではなく、実態として発注者の指揮命令の元に請負人の従業員が業務遂行をしている状態をいいます。

発注者が請負人の従業員を直接指揮命令する点において、法的には労働者派遣と評価されます。

 

2.偽装請負と適正な業務請負の区別

偽装請負と適正な業務請負の区別については、厚労省から「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)とその疑義応答集が出されており、参考になります。

37号告示のポイントについては、大きく分けて、【労働者の独立性】と【業務遂行の独立性】にわかれます。以下、それぞれについて詳述します。

3.【労働者の独立性】

(1)事業(業務)管理上の独立

従業員に対する業務遂行方法に関する指示その他の管理(従業員の評価を含む)を請負人が行うことが必要です。具体的には、請負労働者に対する仕事の割り付け、順序、緩急の調整等につき、当該請負人が自ら行う必要があります。作業指示の注意点としては、請負人側の窓口を一つにすることが重要です。

具体的には、請負人は、自己の請負業務の実施にあたって、管理責任者を任命し、発注者からの具体的な注文や指示は、同管理責任者が代表してこれを受け、同管理責任者から請負人の個々の従業員に指示していくことになります。管理責任者は、作業者を兼任して通常は作業していたとしても、請負労働者の管理が出来ていれば問題はありません。

ただし、請負作業場に、作業者が一人しかいない場合で当該作業者が管理責任者を兼任する場合には、実態的には、発注者から管理責任者への注文が、発注者から請負労働者への指揮命令となることから、偽装請負と判断されるおそれがあります。ですので、個人請負は偽装請負と評価される可能性が非常に高いことに注意してください。

また、作業指示の程度についても、発注者が請負業務の作業工程に関して、仕事の順序・方法等の指示を行ったり、請負労働者の配置、請負労働者一人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすることは、偽装請負と判断されますので、注意してください。たとえば、仕事の納期を3日早めて欲しければ、管理責任者にはそれだけを伝えて、どのようにして早めるかは請負会社に決めさせるといった対応をするべきでしょう。

(2)労働時間管理上の独立

始業・終業、休憩時間、休日、休暇、時間外労働、休日労働等の指示及び管理は、すべて請負人の管理責任者が行わなければなりません。

したがって、発注者が自己の従業員と同じ労働時間管理の方法により、請負労働者の労働時間を一括管理するのではなく、発注者とはまったく別のシステムで労働時間を管理するようにしてください。

(3)秩序維持、確保の独立

請負労働者に係る事業所への入退場に関する規律、服装、職務秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、請負労働者の勤務場所、管理責任者の決定・変更は請負人が自ら行う必要があります。

業務請負契約書において、請負労働者が発注者の就業規則等を遵守するという条項が規定されている場合や請負労働者に発注者の従業員とする身分証明書、ネームカード等が交付されている場合、発注者が請負労働者に、直接個人情報保護や守秘義務の誓約書の提出を求めている場合等には、秩序維持・確保の独立性は認められません。

また、発注者の労働者と同一の作業服とすることについて、特段の合理的理由(企業秘密を守るため、労働者の安全衛生のため等)により、双方合意のうえ、予め請負契約で定めている場合には許されうるといわれていますが、極めて例外的な場合を想定していますので、できる限り避けるべきでしょう。

さらに、発注者の労働者と請負労働者の混在作業についても、裁判例では、混在作業がなされていることが偽装請負の重要な要素として挙げられているので、避けた方がよいでしょう。

 

4.【業務遂行の独立性】

(1)必要経費の調達

請負人が、業務遂行上必要な費用や事業資金をすべて支弁していることが必要です。請負業務の対価の決定方法として、人工単価(従業員の人数×従事日数×単価)がとられることがありますが、請負人が自ら支弁すべき労務費を発注者が代わりに支払っているとされる可能性があります。

そこで、請負業務の対価の決定方法としては、できる限り、1個・1業務あたりの単価計算をとるべきです。少なくとも事前の見積書を取得して、作業内容や期間が増えた場合には、安易に人工単価を増やすのではなく、修正見積・請求を行うようにしましょう。

(2)請負人としての責任

取得請負人として、瑕疵担保責任等、民法・商法その他に規定された責任を負っていることを意味します。請負契約においてその旨を明記し、契約の内容としていればよいでしょう。

(3)単に肉体的な労働力の提供ではないこと

請負人が自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備もしくは器材(業務上必要な簡易な工具を除きます)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること、自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づいて、業務を処理することを意味します。

なお、請負人が必要な機械等をすべて第三者から購入する必要はなく、発注者から有償で借りることも可能です。ただし、その場合は賃貸借契約書を忘れずに作成しておきましょう。

 

5.まとめ

発注者が請負人と業務請負契約を締結する場合は、上記3、4の各事項に注意しながら、発注・管理運用するようにしてください。偽装請負の問題についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

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