バイトテロの法的責任と会社の対応方法
1.はじめに
近時、主に飲食店や小売店のバイト社員をはじめとする非正規社員が、勤務先の商品や什器備品を使って悪ふざけをしている言動や写真を、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へ投稿することで、インターネットが炎上し、会社がその対応に追われるといった被害が生じています。このような現象を最近は、バイトテロと呼ぶようです。
一度、SNSに投稿されてしまいますと、シェアやリツイート等で早期かつ広範囲に拡散してしまい、完全に削除することができなくなってしまうという特徴があります。また、商品やサービスについて不安を感じた消費者や取引先から、買い控えをされたり取引を停止されたりすることで、経営に悪影響が及んだり、場合によっては店舗が休業や閉店に追い込まれるといった事態が生じることもあります。
では、こういったバイトテロを行った社員にはどのような法的責任が生じるのでしょうか。また、会社はどのように対応していけばよいのでしょうか。
2.法的責任
バイトテロを行った社員が負う法的責任には、刑事責任と民事責任が考えられます。
(1)刑事責任
まず、投稿内容が会社の名誉や信用を棄損する内容であった場合、名誉棄損罪や侮辱罪が成立するおそれがあります。また、投稿の内容によっては、威力業務妨害罪が成立するおそれもあります。悪質な事案の場合、会社としては刑事告訴をすることも検討するべきでしょう。
(2)民事責任
会社はバイトテロを行った社員に対して、被った損害を賠償請求することが考えられます。問題は損害の範囲ですが、バイトテロの対象となった商品(主に食料品)及びその廃棄費用、清掃・消毒が必要な場合はその費用等が考えられます。
なお、買い控えや取引の停止、休業等で会社が本来得ることができた営業利益も損害として請求することが考えられますが、高度な立証が必要となります。
また、会社から従業員に対する損害賠償請求は、信義則上相当と認められる限度に制限されることが多いです。なお、仮に訴訟をして損害が認められたとしても、バイトテロを行った社員の財産状況によっては、全額の回収は困難なことも多いことが予想されます。
さらに、社内の懲戒処分については、投稿内容が悪質で会社への影響が大きい場合には、懲戒解雇が相当と考えられます(就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当することが前提となります)。
3.会社の対応方法
まず、会社がバイトテロの情報を把握した場合、すぐにその証拠を収集・保全してください。具体的な収集・保全の方法ですが、投稿内容のデータを保存したり、プリントアウトや写真に撮るとよいでしょう。
その後、すぐに事実関係について、対象となった社員を中心に聞き取りをしてください。
バイトテロを行った社員に対し、刑事告訴や懲戒処分、損害賠償請求をすることで、今後の抑止的な効果も期待できますが、何より大切なことは消費者や取引先の信頼回復を図ることです。ホームページ等に速やかに謝罪文を掲載し、具体的な再発防止策を策定・公表することで信頼回復を図ることを最優先しましょう。
バイトテロが生じる原因は、管理体制の不備や社員の規範意識の希薄さにあります。普段から、現場の管理体制の構築や運用に力を入れる必要があります。また、バイトテロの他社の事例や対応を具体的に説明するなどの社員教育をしたり、SNSのガイドラインの策定や周知徹底をすることで、社員の規範意識を高めることが何よりの予防策でしょう。
バイトテロの問題についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。