就業規則変更の合理性

1.就業規則の不利益

変更労働者の労働条件を変更する場合、原則として労働者と使用者の合意が必要です(労働契約法第8条)。

また、一定の要件を満たした場合、就業規則の変更により労働条件を変更することも可能です。一定の要件とは、①就業規則の変更が合理的なものであること、②変更後の就業規則を労働者に周知させることです(労働契約法第10条)。

 

2.合理性に関する判断要素

(1)就業規則の変更が合理的か否かの判断要素としては、次の各要素が考慮されます。すなわち、①就業規則の変更で労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④関連する他の労働条件の改善状況(代替措置等)、⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合又は他の従業員の対応、⑦同種事項に関する日本社会における一般的状況です。各要素のうち、特に注意するべき点を以下詳述します。

(2)①就業規則の変更で労働者が被る不利益の程度について

賃金を下げる場合、各労働者の生活設計があるので、その金額ではなく減額割合に重きを置いて考える必要があります。

(3)②使用者側の変更の必要性の内容・程度について

賃金・退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関しては、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである必要があります(大曲市農協事件/最判昭和63年2月16日)。したがって、会社としては、不利益変更の高度の必要性を具体的に説明できなければなりません。

(4)④関連する他の労働条件の改善状況(代替措置等)について

いきなり変更するのではなく、不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきでしょう(みちのく銀行事件/最判平成12年9月7日)。

(5)⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合又は他の従業員の対応について

支店・事業所ごとに説明会を開催することが必要です。その際には、パワーポイントでの説明や新処遇明細の配布を行うとよいでしょう。

また、就業規則の不利益変更の合理性を担保するため、まずは対象者のリストアップを行い、10%前後の減額になる者については、個別に説明を行い、変更について同意を得ておくとよいでしょう。

3.その他の具体的な諸問題

(1)賞与のカット算定基準や成績査定方法が定まっているにもかかわらず、当該算定基準や査定方法に従わず賞与をカットした場合には無効となります。したがって、賞与の支給規程を定める場合、算定基準や査定方法を細かく規程するのではなく、調整が可能なように裁量の広い規程にすることがポイントです。

(2)諸手当の廃止・減額営業職の営業手当をなくす等、一度、賃金規程で定めた諸手当を一方的に変更して廃止・減額する場合、高度な必要性に基づく合理性が必要となりますので、ご注意ください。就業規則・労働条件の問題についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

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