建設業における時間外・休日労働の上限規制と働き方改革

第1 はじめに

2018年6月に成立した働き方改革関連法によって、労働法分野における様々な法律が一括改正されました。労働基準法においては、従来の労働時間規制が見直され、罰則付きで時間外・休日労働の上限規制が設けられました。
時間外・休日労働の上限規制については、原則として2019年4月から施行されているところ、建設業に関しては、5年の猶予期間が与えられ、2024年4月からの施行となっています。
そこで今回は、建設業界の方に向けて、施行が迫っている時間外・休日労働の上限規制について解説していきます。

 

第2 時間外・休日労働の上限規制の内容

1 労働時間規制の概要

労働基準法32条は、1項で「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」、2項で「…一日について八時間を超えて、労働させてはならない」と規定し、「1週40時間・1日8時間」原則を定めています。また、同法35条1項は、「…毎週少なくとも一日の休日を与えなければならない」と規定し、週1日以上の休日を与えることを原則としています。
しかし、同法36条は、その例外として、労使協定が締結されている場合には、時間外・休日労働をさせることができるとしており、これがいわゆる「36協定」といわれるものです。ただ、36協定を締結した場合でも、その上限は、月45時間以内、年360時間以内と定められているところ、企業によっては、業務量の大幅な増加に伴い、臨時的にその上限以上の残業をさせる必要性が生ずる場合もあるでしょう。
そのような場合に備えて、労働基準法は、「特別条項付き36協定」というものを用意し、さらなる残業をさせることを許容していました。そして、今回の法改正の対象となったのは、この「特別条項付き36協定」であり、「特別条項付き36協定」にも上限が設定されることとなりました。

2 内容

「特別条項付き36協定」における上限規制は、以下のようなものです。
① 時間外・休日労働の合計が1カ月100時間未満
➁ 時間外・休日労働の合計が「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」のいずれにおいても月80時間以内
③ 時間外労働が1年で720時間以内
④ 時間外労働が月45時間を超えることができる日数は1年で6回以内
また、建設業においては例外が定められており、災害時の復旧・復興のための事業を行う場合には、①②については適用が除外されており、③④のみ遵守する必要があります。

3 猶予期間

冒頭でも述べた通り、建設業に対しては、5年間の猶予期間が与えられており、2024年4月から施行されることになっています。このように比較的長めの猶予期間が設定されているのは、他の業界と比べて長時間労働が常態化しており、業界全体の体質改善に一定程度の時間を要すると考えられたためです。

4 罰則

上記規制に違反した場合、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に課される可能性があります。また、厚生労働省が悪質だと判断した場合には、企業名が公表されるおそれもあり、注意が必要です。

 

第3 時間外労働の上限規制以外に今後注意すべき制度

1 週休2日制の導入

前述の通り、労働基準法は、少なくとも週に1日以上の休日を与えなければならないと定めるのみで、週休2日制については定めていません。
もっとも、働き方改革によって、建設業界でも週休2日制の導入が進められています。
法律の規定がないため、罰則もありませんが、将来の建設業界の担い手を確保するためにも、週休2日制の導入も考えていくべきでしょう。

2 同一労働・同一賃金

同一労働・同一賃金とは、一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。具体的には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容が同一ならば、正規雇用労働者に支払われているボーナスや手当を非正規雇用労働者にも支払わなければならないという制度です。
この制度も、時間外・休日労働の上限規制と同様に、建設業界では、2024年4月から施行されることになっています。

3 割増賃金率の値上げ

現在、時間外労働の割増賃金率は、基本25%で、大企業についてのみ、月60時間を超える時間外労働を行った際に50%に上がるという仕組みがとられています。
しかし、2023年4月からは、大企業だけでなく、中小企業も、月60時間を超える時間外労働を行った際には、割増賃金率が50%に引き上げられるため、注意が必要です。

 

第4 建設会社が行うべき準備

建設会社としては、時間外・休日労働の上限規制の施行に備え、従来の労働環境を見直す必要があります。
具体的には、労働者の労働時間を適正に管理するため、勤怠管理システムを導入したり、作業の効率化を推し進めて、一人一人の労働時間を減らしたりする取り組みが有用であると考えられます。
施行までまだ時間があるとはいえ、今の段階から準備をしておくことが望ましいでしょう。

 

第5 終わりに

今回は、建設業界において、2024年4月に施行される時間外・休日労働の上限規制や、その他に今後適用される制度をご紹介しました。いずれの制度も、その内容をしっかり把握し、対策を練っていく必要があります。
これらの規制の適用に関してお困りの方は、労務分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

 

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