弁護士と社会保険労務士の違い
1.社会保険労務士とは
まず,社労士とは,社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。
企業の成長には,お金,モノ,人材が必要とされておりますが,社労士はその中でも人材に関する専門家であり,「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに,事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として,業務を行っております。
社労士は,企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど,業務の内容は広範囲にわたり,労務に関する専門家であるといえます。
2.社労士と弁護士の違い
それぞれ企業の労務問題を取り扱うという点においては共通していると考えられます。しかし,社労士と弁護士の違いは以下のように決定的な違いがあります。
・弁護士は司法試験合格後司法修習を経た専門家です。特に労働事件を多く取り扱う弁護士は労務問題に精通しており,事案の見方や見通しの立て方等は,法律の専門家として思考や経験に裏打ちされたものです。
・弁護士は労働問題に関する交渉全般の代理権限を有しております。労働問題が発生した時に,労働者や労働組合と代理人として交渉権限を有しているのは基本的に弁護士だけです。特定社会保険労務士は労働局のあっせん手続のみ代理権を持ちますが,その他の交渉を,報酬を得て行うことは弁護士法に違反して許されません。そのため,弁護士は労働問題全般について代理人として交渉権限を有しているという点で社労士と決定的に違うところであるといえます。
・弁護士は労働問題全般に関する訴訟・労働審判・仮処分等の裁判手続すべての代理権限を有します。交渉でうまくいかなかった場合には裁判手続きに移行し,裁判所で決着をつけることとなります。裁判手続きにおいて代理権限を有するのは弁護士だけです。弁護士は裁判での見通しや訴訟戦略等考え,依頼者に有利な結果がでるように動きます。
以上が社労士と弁護士の違いになります。もし労働問題で困った場合やトラブルが発生しそうな場合には労働事件を多く取り扱っている法律事務所や弁護士に相談するのがよいでしょう。既に発生している労働問題はもちろん,予防法務としてあらかじめトラブルが発生することを防止することも可能です。