労働審判の手続き・スケジュール
目次
1.労働審判手続とは
地方裁判所で行われ、3回以内の期日で紛争解決を図ります。
プロの裁判官(労働審判官)1名と、企業人事担当者や組合幹部のOB(労働審判員)2名で構成される労働審判委員会が審理を行い、判断を下します。
2.労働審判のスケジュール
①申立から第1回期日まで
申立から第1回期日まで準備期間が40日間しかありません。
ですので、労働審判手続の申立てが予想されるケースでは、事前に弁護士に相談しておき、呼出状が来たら、すぐに対応してもらえるようにしておきましょう。
遅くとも第1回期日の1週間前には答弁書・証拠を提出しましょう。
答弁書は審判員に送付されますが、証拠は裁判所で見るしかありません。審判員が証拠の精査をする時間は事実上ないと考えてください。
ですので、事前に審判員に絶対に目を通しておいて欲しい証拠の該当箇所や写真があれば、答弁書に張り付ける等の工夫が必要です。
②審判委員会による事前評議
まず、審判委員会による事前評議が行われます。事前に提出された申立書・答弁書・証拠を見て、争点を評議します。事前評議の時点で、解雇が有効か無効か、どの場面で未払い残業が発生しているかを判断してしまいます。
ですので、答弁書で主張・証拠はすべて出し切る必要があります。第2回期日以降での追加主張・証拠はあまり意味がないことに注意してください。
③審 尋
審理を行うにあたっては、主に審判官が申立人や相手方に直接事情を聞きます(「審尋」といいます)。会社側としては、事前に十分練習をして、こちらに有利な事実と相手に不利な事実を補足して説明するようにしてください。また、会社側に有利な証人がいれば、第1回期日の日程を確保していただき、十分に打ち合わせをしたうえで、同席を求めるようにします。
④審判委員会による評議
その後、審判委員会による評議が行われます。審尋で確認した事実を整理します。事前評議での解雇の有効・無効や未払い残業代の有無の判断が、この時点で大きく変わることはありません。
ここでは、提案する和解額が検討されます。審判委員会は、当事者が和解案を受け入れるかどうかを非常に気にかけて、和解案を考えています。
⑤調停
評議が終わると、和解に向けて話し合いが行われます。
当事者が交互に労働審判委員会と話をし、和解に向けて、どこまで譲歩が可能かを話し合います。
大規模庁や中堅地方庁では、第1回審尋期日で調停に入ることが多いので、事前に和解案について、ある程度検討しておく必要があります。
⑥審判
話し合いによる解決を模索しますが、これがまとまらない場合には、審判委員会が結論(審判)を言い渡します。
⑦不服申立
当事者が、労働審判に不服がある場合には、不服申し立てをし、地方裁判所の通常の訴訟事件へ移行することになります。
中小規模庁では、不服申し立て後の正式裁判の裁判官が労働審判手続きの裁判官と同じこともしばしばあります。また、審判結果が証拠として提出されることも多いので、審判の内容が、本裁判にも大きく影響するといえるでしょう。
労働審判の問題についてお困りの方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。