派遣社員から妊娠報告があった場合の派遣先としての対応
質問
この度、弊社で働いていた女性の派遣社員が妊娠したことが発覚しました。大変喜ばしいことではあるのですが、今後つわり等の症状により業務に支障が生じる可能性があることを考慮すると、弊社としては近々派遣元に対して派遣社員の交替(=当該派遣社員との契約を終了して、新しい派遣社員を派遣してもらう)を求めたいと考えています。
上記対応に法律上問題はあるでしょうか(①)。また、妊娠中や出産後の派遣社員の健康管理については、派遣元・派遣先のいずれがその責任を負うのでしょうか(②)。
回答
・①について
事業主は、女性労働者の妊娠・出産等を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはいけないところ(男女雇用機会均等法(以下「均等法」といいます。)9条3項)、この条文は、派遣元のみならず派遣先にも適用があります(労働者派遣法47条の2)。そして、派遣元に対し派遣社員の交替を求めることも、当然「不利益な取扱い」に該当します。
そのため、貴社の対応は、均等法違反に該当する行為として、違法・無効となる可能性が高いでしょう。
例外的に、妊娠前から本人の能力不足が顕著であった、妊娠に起因する症状(つわり等)により派遣労働契約で定められた仕事を全くこなせなくなった等の合理的な理由があれば、合法となる余地はありますが、その立証責任は派遣先が負うことになりますので、ハードルは非常に高いといえます。
そこで、現実的には、派遣社員本人の同意がない限り、派遣元に対し派遣社員の交替を求めることはできないと考えた方がよいでしょう。
・②について
事業主は、女性労働者の妊娠中及び出産後の健康管理について、勤務時間の変更や勤務の軽減等の必要な措置を講じなければならないところ(均等法12条・13条1項)、この条文についても、派遣元のみならず派遣先にも適用があります(労働者派遣法47条の2)。
そのため、どちらか一方が100パーセントの責任を負うのではなく、派遣元・派遣先が連携して上記措置を講じる必要があります。
ただ、実際に派遣社員が働く場は派遣先であり、当該派遣社員の健康状態をよく確認できるのは派遣先かと思います。そのため、派遣先が主導的に当該派遣社員の健康管理に努め、適宜派遣元とも協議しながら対応を決めていくのが望ましいでしょう。