外国人労働者を雇用する企業が注意すべき労務トラブルとは

近年、日本における外国人労働者の数は年々増加しており、多様なバックグラウンドを持つ人材が職場に加わることは、企業にとって新たな成長の機会となっています。その一方で、労務管理の不備や文化・言語の違いから労務トラブルに発展するケースも少なくありません。以下では、外国人労働者を雇用する際に企業が注意すべき労務トラブルとその防止策について解説します。

1.外国人労働者の雇用が増える背景

日本の労働市場では少子高齢化により深刻な人手不足が続いています。そのため、介護、建設、製造、飲食といった分野を中心に外国人労働者の受け入れが拡大しています。さらに、2019年の「特定技能」制度創設により、中長期的に外国人材の活躍が見込まれる環境が整いました。しかし、受け入れる企業側が法令遵守や適切な労務管理を怠ると、労働基準監督署による指導や行政処分、さらには企業イメージの低下につながる可能性がありますので注意が必要です。

2.よくある外国人労働者の労務トラブルの種類

外国人労働者を雇用した場合には、さまざまな理由から、トラブルが発生することがあります。トラブルの例としては、面接時に説明された条件と実際の労働条件が異なるといった労働条件の不一致、残業代の未払いあるいは寮費や光熱費の不透明な天引きなどによる賃金をめぐる問題、長時間労働や休憩時間が確保されないといった労働時間管理の不備、文化的背景や言語の壁から生じるパワハラや差別的言動などのハラスメント問題、さらには在留資格の更新漏れや不適切な職種での就労といった在留資格管理の不備も挙げられます。これらのトラブルは、単なる企業内の問題にとどまらず、場合によっては行政処分や刑事罰に直結することもあります。

3.トラブルを未然に防ぐための体制整備

このようなトラブルを未然に防ぐためには、企業として適切な体制を整えることが不可欠です。まず、外国人労働者の在留資格や労働条件を適切に管理する労務管理担当者を配置することが重要です。また、就業規則や契約書を母国語で提示するなど、通訳・翻訳体制を構築し、労働者が正しく内容を理解できるように努めることも必要です。さらに、安心して相談できる社内窓口を設置したり、外部相談先を案内したりすることも効果的です。そして、上司や同僚に対して多文化理解研修を実施し、文化的背景を理解して円滑なコミュニケーションを取れるよう教育することが望まれます。

4.就業規則・労働契約書の整備ポイント

外国人労働者を雇用する際には、就業規則や労働契約書の整備が特に重要です。勤務時間や休憩、休日、賃金、社会保険などの労働条件を具体的に明記し、可能であれば外国語版を用意して労働者が十分に理解できる形で説明することが求められます。また、契約更新や雇止めの条件をあらかじめ明示しておくことで、不当解雇に関するトラブルを防止することができます。さらに、特定技能や技能実習制度に基づく書類作成や報告義務を怠らず、制度を遵守する姿勢を徹底することも欠かせません。

5.行政調査・監督対応の注意事項

法令順守や適切な労務管理を怠った疑いがある場合などには、労働基準監督署や入管当局から調査や監督を受ける可能性もあり、その際には十分な準備が必要です。労働契約書やタイムカード、賃金台帳、在留カードのコピーなどの書類を適切に管理し、すぐに提示できるようにしておくことが重要です。調査時には決して虚偽の説明をしてはならず、虚偽報告を行えば企業に対して行政処分や刑事責任が科される危険があります。こうした調査対応に際しては、弁護士や社労士などの専門家に同席してもらうことで、不適切な発言や不利な対応を避けることができます。

6.外国人労働者雇用のコンプライアンス強化

外国人労働者を雇用する企業は、コンプライアンス強化に向けた取り組みを徹底する必要があります。採用前には必ず在留資格を確認し、就労可能な範囲を正確に把握することが前提となります。また、最低賃金法や労働基準法、労働契約法などの労働関係法令を遵守する姿勢を徹底し、定期的に社内監査を行って労務管理体制を点検し、不備を改善していくことも大切です。さらに、弁護士や社労士と顧問契約を結び、法改正や最新の動向に迅速に対応できる体制を整えることが望まれます。

7.まとめ

外国人労働者の受け入れは、企業にとって人材不足を解消し、国際化を推進する大きな力となります。しかし、労務トラブルが発生すれば、企業の信用や事業継続に深刻な影響を及ぼしかねません。だからこそ、法令を遵守し適切な労務管理を徹底するだけでなく、文化や言語の違いを尊重し、安心して働ける環境を整えることが必要です。当事務所では、外国人労働者の雇用に関する契約書作成や就業規則の整備、行政調査対応など幅広い法的サポートを行っております。外国人雇用に関するご相談は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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