社内で業務上横領が起きたときの証拠の集め方

1 はじめに

社内で業務上横領が発生した場合,横領の証拠を集めることが何よりも重要です。なぜなら,もし会社の証拠収集が不十分であった場合,のちに裁判で会社が敗訴してしまう等のおそれがあるからです。以下では,社内で業務上横領が起きたときの証拠集めのポイントを解説します。

 

2 証拠集めの概要

証拠集めの大まかな流れは,以下の通りです。

 ①客観的な証拠をできる限り確保する
 ②本人からの事情聴取を行う
 ③本人に横領を認めさせる(自白の獲得)

 

横領の事実を明らかにするためには,「誰が」,「いつ」,「何を」,「どのように」横領したのかについての証拠が必要です。これらは,本人に聞くのが一番早く確実なので,本人の自白を得ることが最重要です。しかし,いきなり本人を呼び出して事情聴取してはいけません。本人がしらばっくれたり嘘をつくおそれが高いからです。そして,本人は,事情聴取後に,自分の手元にある証拠をすべて削除してしまうでしょう。こうなってしまっては,会社としては証拠を集めることができなくなり,横領の責任を追及することもできなくなってしまいます。

本人の自白獲得は,最終目標と位置づけ,それまでに客観的な証拠を収集しておくことが重要です。

 

3 客観的証拠の具体的な集め方

(1)レジの金銭を横領した場合

レジの金銭を横領した場合,最も効果的な証拠収集は,防犯カメラで横領の瞬間を撮影することです。できれば一定期間継続し,横領の瞬間を何度か撮影してください。一度撮影できただけだと,「間違ってポケットに入れただけ」,「後から戻そうと思っていた」等の言い訳をされてしまうおそれがあるからです。

(2)顧客から集金した金銭を横領した場合

顧客から集金した金銭を着服するタイプの横領では,顧客が持っている領収書を確保しておくのが重要です。そのためには,顧客に事情を話す必要があるので,会社としては抵抗感があるかもしれません。しかし,横領の証拠を得られないまま長引くと,かえって顧客に迷惑を掛けることにもなります。横領が発覚したらすぐに顧客のところへ謝りに行き,その際に領収書を回収させてもらうのがよいでしょう。

(3)会社の商品を横領し,転売した場合

会社の商品を横領し,転売しているというケースもあります。こういったケースでは,横領の瞬間を防犯カメラで撮影するほか,転売の証拠も確保しておきたいです。転売は,メルカリ等のフリマアプリやヤフオク等のオークションサイトを利用して行われることが多いです。出品状況が分かるページを印刷しておきましょう。このとき,印刷日やホームページのURLが表示される方法で印刷するようにしてください(印刷時に設定できます)。こうすることで,証拠価値が高まります。

(4)その他

キックバック等,取引先を巻き込んだ横領の場合,取引先とやり取りしたメールやチャット,通話履歴等が重要な証拠となります。特にメールやチャット等は,本人が簡単に削除できてしまうので,本人に勘付かれる前に,証拠保全しておく必要があります。もしすでに削除されていた場合は,バックアップ等がないかを確認し,バックアップ等もなければ,データの修復等も検討してください。

 

4 本人からの事情聴取のポイント

以上のような方法で客観的証拠を収集し,準備が整った段階で,本人から事情を聞きます。事情聴取では,本人が嘘をつくおそれが高いです。しかし,客観的証拠がそろっていれば,本人が言い逃れできない状態になります。本人がついた嘘と矛盾する証拠を突きつければ,本人も観念する可能性が高いです。

本人が横領を認めれば,その旨一筆書かせることが重要です。また,本人の同意がなければ収集できない証拠も押さえておきましょう。本人のカバンの中にある横領品,本人だけがパスワードを知っているフリマサイトにログインさせてその販売履歴を確認する等,後々本人が横領を否定してきても大丈夫なように,証拠を確保しておいてください。

 

5 まとめ

社内で横領が発生した場合,証拠収集等の初動が何より重要になります。証拠収集に失敗し,横領した従業員への懲戒処分等を実施できなかった場合,周囲の従業員の士気も低下しますし,横領の再発を招く危険もあります。

証拠の収集等は,弁護士の主戦場ともいうべき分野です。社内で横領が発生した場合は,早めに弁護士にご相談ください。適切な初動対応で,迅速かつ適切な解決を目指しましょう。

 

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