時短ハラスメント(ジタハラ)に注意!

1 時短ハラスメントとは

時短ハラスメント(ジタハラ)というものをご存じでしょうか。時短ハラスメントとは、職場において、業務時間の短縮を強要するハラスメントのことです。
働き方改革による残業時間規制により、企業は残業時間を減らす傾向にあります。しかし、現実の業務量は減っていないので、従業員は自宅に仕事を持ち帰らざるを得ません。このように、業務改善をすることなく、見た目の残業時間を減らそうと残業を禁止すると、以下のような問題が生じるリスクがあります。

2 ジタハラにより発生するリスク

(1)従業員による残業代請求

残業を禁止して従業員を強制的に帰宅させたとしても、実際には自宅での業務を行っていた場合には、残業代が発生する可能性があります。従業員が自宅での残業記録をつけていた場合、未払残業代の発生が認められ、多額の残業代を支払うことになるかもしれません。

(2)生産性の低下

ジタハラを受けた従業員は、自宅や喫茶店等で仕事を行うことになります。以前は残業代が出ていたにもかかわらず、今は残業代が出ずに給料が減るとなると、業務に対するモチベーションが著しく低下します。その結果、モチベーション低下が就業時間中の業務にも影響を与え、生産性の低下を招きます。

(3)従業員の離職・休職

業務時間外であるにもかかわらず、仕事をしなくてはいけない状態は従業員にとって大きなストレスです。ジタハラが続けば従業員の労働意欲はますます低下し、離職につながります。離職にまで至らなくとも、心身の変調により休職する社員も出て来るでしょう。従業員が長く居つかず経験の浅い従業員ばかりになると、会社が提供できるサービスの質が低下するうえに新人採用のためのコストもかかります。会社は知らず知らずのうちに、他社との競争力を失っていくのです。

3 ジタハラの対策

上記のようなジタハラの悪影響が拡大しないように、会社は以下のような対策をとる必要があります。

(1)勤務状況の把握

残業禁止を進めていくと、業務をさばき切れない従業員がひそかに残業する場合があります。まずは、どの従業員がどの程度のサービス残業を行っているのか実態把握をする必要があります。記録上は退勤にしたうえで、そのまま仕事を続けている場合もあります。退勤後に顧客にメールを送っていないか、早出して仕事をしていないかといったことをチェックすることで勤務状況を把握します。各部署から情報を集約し、サービス残業が常態化している従業員がいないか精査しましょう。

(2)業務の適正化

直接の上司は、各従業員に割り振られている仕事量を正確に把握し、特定の従業員に仕事が偏重しないように気を配って適正な仕事量に調整する必要があります。仕事が出来るからといって有能な従業員に仕事が集中してもいけません。有能な従業員ほど仕事の割り振りに不公平感を抱くようになり、離職につながります。仕事内容、仕事完了までの期間等を考慮したうえで、各従業員が過重労働に陥らないよう仕事が割り振れているか改めて見つめ直しましょう。現在の従業員数で対応しきれないならば、当該部署に人員が足りていないということです。他部署の人員を配置したり、新たな従業員を雇うことで、会社全体での仕事量の適正化を行いましょう。

(3)環境の整備

ジタハラは、はっきりと命じられたわけでなくとも上司により実質的に強要されていることが多々あります。上司を介することなく労働環境について相談できる社内相談窓口を設置するのがよいでしょう。相談窓口は従業員が利用しやすいよう、匿名性を維持できるようにしておく必要があります。例えば、対面では相談しにくいという相談者のために、メールやチャット、電話相談といった方法での相談手段を確保しておくことが考えられます。

4 最後に

ジタハラは、短期的には見かけ上の労働時間が減り、支払う給与も減ることになりますが、最終的には従業員の業務効率の低下、離職を誘発して会社の競争力を損ないます。ジタハラを防ぐうえで、重要なのは労働実態に則した従業員の業務適正化です。これには、適切な業務の割り振りだけでなく、新たな労働力を雇用することも含まれます。ジタハラが原因で、従業員から未払残業代を請求されたり、離職していくことのないよう、適切な解決を図る必要があります。人事労務問題にお悩みの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。

 

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