産前産後休業における賞与

1.賞与の意義

 賞与には、功労報償、生活保障、将来の意欲の向上などの性格があると言われています。賞与の功労報償的な面を強調すれば、欠勤その他不就労によって出勤率が低い者については、不支給・減額することも、あながち不合理とはいえないでしょう。

 この点、労働基準法は、産前産後休暇の取得を認めている(同65条)ことから、賞与額を算定するにあたり、算定対象期間中、当該休暇を取得した日をすべて一律に「欠勤」として扱うことが許されるかが問題となります。

 

2.休暇の取得と賞与額減額措置の可否

 産前産後休暇は、法律上無給扱いとすることが可能です。よって、賞与額を算定するにあたり、産前産後休暇の取得日を「欠勤」と取り扱うこと自体には問題はありません。

 しかしながら、「欠勤」と取り扱うことにより、労働者の経済的不利益が大きい場合には、その労働者の権利行使を抑制し、労基法が産前産後休暇を認めた趣旨を実質的に失わせるものとして、違法になる可能性もあります。

 したがって、減額する金額によって経済的不利益が大きくならないように留意するべきでしょう。

 

3.90パーセント条項との関係

 賃金規程において、賞与の支給条件について、算定対象期間の出勤率が90パーセント以上であることを必要とする条項(以下「90パーセント条項」といいます。)が規定されている場合があります。

 この点、90パーセント条項の適用上、産前産後休暇を取得した日数等を「欠勤」と取り扱う部分は、公序に反し無効であるとし、その一方で、賞与額の計算式において、産前産後休暇を取得した日数等を欠勤として取扱い減額の対象とする規定については、それらの不就労期間は無給であることが原則であるから、公序良俗違反とはならないと判断した判例があります(東朋学園事件・最判平15・12・4)。

 この判例に鑑みれば、産前産後休暇の取得をもって90パーセント条項を適用するのではなく、欠勤として減額の対象とするにとどめるのが望ましいでしょう。

 

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