パワハラと労基署

1 はじめに

近時、いわゆるパワーハラスメントをめぐって労使間でトラブルとなる事例が増加しています。
以下では、使用者としてのパワーハラスメント対応や、労働基準監督署等の行政機関による関与について解説します。

2 パワハラと行政機関

(1)労働者による総合労働相談コーナーへの相談

労働者がパワハラに関して公的機関に相談する場合、都道府県の労働局(労基署の上部組織)が実施している総合労働相談コーナーに相談することが考えられます。
同コーナーでは、労働基準法への違反のみならず、各種ハラスメント・いじめを含む労働問題全般について相談の対象としています。
これに対し、労働基準監督署(労基署)は、本来労働基準法上の規制に違反するケースを所管しており、直接パワハラに関する相談を扱っているわけではありません。

(2)あっせん・助言指導の利用案内

労働者からパワハラに関する相談を受けた労働局は、社内での解決が可能かどうか等について、適宜ヒアリングを行って確認します。
その上で、当事者間で解決することが難しいようであれば、「あっせん」や「労働局長による助言指導」と呼ばれる制度の利用を案内します。

ア あっせん
あっせんとは、都道府県労働局ごとに組織される紛争調整委員会が指名する専門家であるあっせん委員が、労使間の問題について、当事者双方の意見をききながら、合意に向けて非公開で進めていく話合いの手続です。
ここで合意が成立した場合には、合意の内容について和解としての法的拘束力が生じます

イ 助言指導
労働局長による助言指導とは、労働局長が、個別労働紛争(労働組合と使用者との間の紛争ではなく、個別の労働者と使用者との間の紛争)について、問題点を指摘して解決の方向を示唆することで、当事者が自主的に紛争を解決することを促進する制度です。

ウ 強制的な措置の有無
あっせんにせよ、助言指導にせよ、あくまで当事者間での話合いによる解決のための制度であり、話合いがまとまらない場合でも、行政機関による強制的な措置がされるわけではありません

(3)労働基準監督署による是正勧告

上述のとおり、パワハラ自体は直接労基署が所管する問題ではありませんが、他に違法残業や未払賃金等の労働基準法に違反する点があれば、労基署から是正勧告がなされる可能性はあります。
労働基準法の規制の多くが刑事罰による制裁を設けており、労基署による是正勧告には誠実に対応する必要があります

3 使用者による行政機関への対応

(1)当局への回答

上述のとおり、原則として、パワハラに関する行政機関からの問い合わせは、ペナルティーや強制的な指導を前提とするものではないため、虚偽の事実を申告したり、理由なく回答を拒否することは避け、誠実に回答するのが無難といえます。

(2)不利益取り扱いの禁止

また、労働者が行政機関に相談したことを理由として不利益な取り扱いをした場合、労働基準法に抵触して刑事罰の対象となる可能性がありますので、この点に注意する必要があります。

4 最後に

このように、パワハラの問題を放置することで、行政機関の関与を招いたり、パワハラの問題を皮切りに労働基準法違反の是正勧告を受けるおそれがあります。
そもそも、社内におけるパワハラの発生をできるかぎり防止するための措置が重要であり、定期的なハラスメント研修の実施等が考えられます。
また、パワハラが発生した場合でも、行政機関を巻き込むことなく、社内で問題解決できる仕組みを整備(社内相談窓口の設置等)しておく必要があります。
もし、「パワハラ対応に不安がある」といったことでお困りであれば、使用者側の労働問題に詳しい弁護士に相談されるのが良いでしょう。

 

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