パワハラの証拠集め

1 はじめに

社内で「パワハラ被害を受けた」という訴えがあった場合、会社としてはどのように対応すればよいでしょうか。
厚生労働省のパワハラ指針では、パワハラの訴えがあった場合、会社は、事実関係を迅速かつ正確に確認することを義務付けています。事実確認とは、5W1Hを確認することです。
そして、事実確認には、当然、証拠が必要です。そのため、パワハラの証拠を迅速かつ的確に収集することは、会社にとって極めて重要です。パワハラの証拠は、その後の懲戒処分や配置転換を判断するうえでも必要になります。
そこで、この記事では、パワハラの証拠集めについて解説します。

2 録音

暴言等の言葉によるパワハラの場合は、録音が最も重要な証拠になります。パワハラの被害者が録音データを提出してきた場合、会社としてもその内容をきちんと確認し、パワハラに相当する暴言かどうかを確認しましょう。
被害者から録音データの提供を受ける際、注意点が1つあります。被害者が、自分に都合の良い部分だけを切り取った録音データを提出してくる可能性があります。そのため、録音開始時から終了時までの全データを提出してもらうようにしてください。

3 メール、チャット等の履歴

暴言等の内容が、メールやチャット等に残っている場合、これも有力な証拠となります。チャット等では、メッセージの送信取消・消去が可能なものもあります。そのため、加害者が送信取消等をする前に、その画面を印刷し、証拠として提出してもらいましょう。

4 動画

防犯上の都合で、社内に防犯カメラを設置している会社も多いと思います。被害者からは、どこでどのようなパワハラを受けたのか聞き取り、その場所次第では、防犯カメラの映像を確認しましょう。動画であれば、「殴った」、「机をたたいた」、「物を投げた」等の動作も確認できるので、有力な証拠となります。

5 被害者の日記

被害者が、自身の日記にパワハラ被害のことを記載している場合があります。このような日記が証拠になる場合もあります。しかし、被害者が一方的に作成できるものですので、その信用性は一般的にそれほど高くありません。あくまで参考程度という位置づけです。
ただし、記載内容が詳細な場合や、いつ書いたかはっきりわかる場合(LINEを日記代わりにしていて、入力日が表示されている場合等)には、信用性が高まります。

6 同僚の証言

パワハラの現場に居合わせた同僚がいる場合、その方の証言も証拠となり得ます。もっとも、客観的な証拠とはいえないので、あくまで参考程度という位置づけです。

7 医師の診断書

パワハラによって怪我をした場合や、精神疾患になった場合には、医師の診断書も重要な証拠となります。もっとも、その怪我が本当にパワハラ行為によって生じたものなのか、本当にうつなのか等、診断書の記載を鵜呑みにすることは禁物です。必要な証拠ではあるものの、全面的に信用できるものではないとご理解ください。

8 最後に

以上のような証拠に基づいてパワハラの事実を認定できた場合、会社としては、加害者への懲戒処分を検討する必要があります。また、被害者と加害者の接触を回避した方がよい場合は、配置転換を検討する必要もあります。さらに、被害者のケア再発防止措置にも取り組まなくてはなりません。
パワハラの訴えがあったにもかかわらず放置した場合には、会社が損害賠償を請求される可能性もあります。また、パワハラ対応を誤ると、従業員の退職にもつながります。さらに、いいかげんなパワハラ認定に基づいて懲戒処分を下すと、パワハラ加害者の方から会社が損害賠償を請求される可能性もあります。
このように、パワハラへの対応は、会社にとって一大事です。パワハラの訴えがあった際は、ぜひ労務問題に強い弁護士にご相談ください。

 

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