Q&A「同一労働同一賃金に対応するために手当を廃止することはできますか?」
テーマ:同一労働同一賃金に対応するために手当を廃止することはできますか?
質問
当社では、現在、正社員に対して複数の手当を支給していますが、有期雇用労働者やパートタイム労働者には、これらの手当を支給しておりません。
このままでは不合理な待遇の禁止(有期雇用労働法8条)等違反のおそれがあるので、これらの手当を廃止しようと考えています。どのような方法によればよいでしょうか。
回答
手当を廃止する方法としては、下記の3つが考えられます。
①正社員と個別に同意する方法
②労働組合と労働協約を締結する方法
③就業規則を変更する方法
①正社員と個別に同意する方法
まず、①正社員と個別に同意する方法ですが、賃金を不利益に変更することになりますので、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要となります。
そこで、会社としましては、不利益の内容、程度、経緯等を労働者に十分に説明をしたうえで、労働者の自由な意思に基づくものと評価されるような同意を得る必要があります。
②労働組合と労働協約を締結する方法
次に、②労働組合と労働協約を締結する方法ですが、労働組合が存在する場合には、労働組合と交渉して、手当を廃止する旨の労働協約を締結することができれば、同組合の組合員に対して、手当を支給しないことが可能となります。
また、労働協約を締結した労働組合の組合員の数が、その事業場の常時使用される同種の労働者の4分の3以上であれば、その労働協約の効力は、組合員でない同種の労働者にも適用されます(労働組合法17条)。
もっとも、労働組合内部で手続違反があった場合、労働協約の効力が否定されるおそれがありますので、労働協約を締結する際には会社の方でも手続違反の有無について確認されるとよいでしょう。
③就業規則を変更する方法
最後に、③就業規則を変更する方法ですが、就業規則の不利益変更に該当しますので、合理性が認められることが必要となります。
賃金の分配総額を変更しない、経過措置をとる等の慎重な対応が必要となるでしょう。
実務的な流れ
実務的には、まずは①正社員と個別に同意する方法を試みたうえで、全正社員との同意を得ることが難しい場合には、②労働組合と労働協約を締結する方法や③就業規則を変更する方法を試みていくことになるでしょう。
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