Q&A「経営資料の開示範囲について」
テーマ:経営資料の開示範囲について
質問
団体交渉をしていて,労働組合から経営資料などの開示を求められています。
会社は労働組合に対して,どの程度の資料を開示しなければならないのでしょうか。
回答
その団体交渉で労働組合を説得するのに必要な資料は開示する必要がある。
1 団体交渉における誠実交渉義務
会社は,労働組合との団体交渉を正当な理由なく拒否してはいけません(労働組合法7条2号)。また,会社は,単に団体交渉のテーブルにつきさえすればよいわけではなく,「合意達成の可能性を模索して誠実に交渉する義務」(誠実団交義務)を負うとされています。会社は,この誠実団交義務の一環として,団交に必要な範囲で資料を開示する義務を負います。もしこれに違反すると,不当労働行為に該当してしまいます。
2 資料開示の範囲
では,具体的にどの程度の資料を開示すればよいのでしょうか。残念ながら,法律でも裁判例でも,「これさえ出せばOK」という基準が具体的に決まっているわけではありません。
しかし,資料開示は,誠実交渉義務の一環として行われるものですから,団体交渉における会社側の主張の根拠を具体的に説明し,その裏付けとなる客観的な資料を開示することが必要です。
たとえば,賃上げ交渉の場合は,売上額,人件費,基本給平均額,平均年齢等について過去・現在の資料を基に,将来の予測も立てる必要があるので,比較的広範な資料開示が必要になると考えられます。
一方,未払賃金請求等の事案で,現時点での会社の支払能力が問題となっている団体交渉では,現時点での会社の経営状態さえ明らかにすれば足りるとも考えられます。
このように,必要な資料開示の範囲は,その団体交渉のテーマや争点によって変わりうるものです。会社としては,できるだけ資料は開示したくないというお気持ちが強いかと思います。
しかしながら,資料開示が不十分だと,せっかく団体交渉を行っているのに不当労働行為だと判断されてしまうリスクがあるので、ご注意ください。
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