Q&A 懲戒処分を社内で公表することの可否
テーマ:懲戒処分を社内で公表することの可否
質問
このたび不正行為をしている従業員がいることが判明し、懲戒解雇処分にしました。他の従業員が類似の不正行為をしないように、懲戒処分を行った旨を社内で公表しようと考えています。このような対応は法的に問題がありますか?
回答
【会社の対応方法】
懲戒処分の事実を社内で公表することも、公表の内容や方法において社会的に相当な範囲であれば可能です。
従業員に対して行った懲戒処分を社内で公表することは、再発防止や企業秩序のために必要でしょう。
もっとも、懲戒処分の事実が公表されることは、対象となった従業員にとって、名誉や信用を低下させる可能性があります。
そのため、公表の内容や方法において社会的に相当な範囲を超えた場合には、対象従業員に対する名誉棄損を理由とする不法行為責任が発生するおそれがあります。
この点、「懲戒処分は、不都合な行為があった場合にこれを戒め、再発なきを期すものであることを考えると、そのような処分が行われたことを広く社内に知らしめ、注意を喚起することは、著しく不相当な方法によるのでない限り何ら不当なものとはいえないと解される」と判示されている裁判例が参考になります(東京地裁平成19年4月27日判決)。
具体的には、対象従業員の氏名やその他特定できる情報(所属部署、役職等)を公表することは、その者の名誉や信用を低下させる著しく不相当な方法によるものとして、違法と判断されるおそれが高いでしょう。
また、懲戒処分の内容や理由を詳細に公表することで、対象従業員を特定できる場合にも、違法と判断されるおそれがあります。
したがって、懲戒処分を社内で公表する場合には、対象従業員を特定できる情報や内容・理由まで公表することは避けるようにしてください。
なお、就業規則に、懲戒処分の社内公表に関する規定を設けておくことも違法性を阻却する判断要素の一つとなり得ますので、検討されるとよいでしょう。
懲戒処分への対応についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。
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