同一労働同一賃金との関係で雇用形態別に就業規則を作成する必要はありますか?

テーマ:同一労働同一賃金との関係で雇用形態別に就業規則を作成する必要はありますか?

質問

当社には、正社員、契約社員、嘱託社員の3種類の雇用形態があります。もっとも、就業規則は1つしか作成しておらず、正社員にのみ適用を予定している規定については、「契約社員と嘱託社員には適用しない」旨の除外規定を設けて、契約社員と嘱託社員については別個に就業規則を作成していません。

このような対応は、同一労働同一賃金との関係で問題がありますか?

 

回答

除外規定が、不合理な待遇の禁止(パート・有期雇用労働法8条)違反で無効となった場合、正社員向けの規定が契約社員や嘱託社員にも適用される可能性があります。

この点、ハマキョウレックス事件最高裁判決は、「正社員に適用される就業規則である本件正社員就業規則及び本件正社員給与規程と、契約社員に適用される就業規則である本件契約社員規則とが、別個独立のものとして作成されていること等にも鑑みれば、両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に、本件正社員就業規則又は本件正社員給与規程の定めが契約社員である被上告人に適用されることとなると解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難である。」と判断しています(最高裁平成30年6月1日判決)。

また、長澤運輸事件最高裁判決においても、「嘱託乗務員について、従業員規則とは別に嘱託社員規則を定め、嘱託乗務員の賃金に関する労働条件を、従業員規則に基づく賃金規定等ではなく、嘱託社員規則に基づく嘱託社員労働契約によって定めることとしている。そして、嘱託社員労働契約の内容となる本件再雇用者採用条件は、精勤手当について何ら定めておらず、嘱託乗務員に対する精勤手当の支給を予定していない。このような就業規則等の定めにも鑑みれば、嘱託乗務員である上告人らが精勤手当の支給を受けることのできる労働契約上の地位にあるものと解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難である。」と判断しています(最高裁平成30年6月1日判決)。

これらの判決は、いずれも正社員と契約社員・嘱託社員の就業規則を別個独立のものとして作成・適用しており、就業規則の合理的な解釈として、正社員との差額賃金請求等を認めることは困難であるとしています。

逆に言えば、ご相談のように、正社員と契約社員・嘱託社員の就業規則を別個に作成していない場合には、除外規定が不合理な待遇の禁止(パート・有期雇用労働法8条)違反で無効となった場合、就業規則の合理的意思解釈として正社員向けの規定が契約社員や嘱託社員にも適用されるおそれがあるとも考えられるということです。

したがって、実務の対応としましては、雇用形態別に就業規則を作成しておくべきでしょう。

同一労働同一賃金への対応についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

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