Q.経費(交通費・接待費)の不正受給をする社員への対応方法
テーマ:経費(交通費・接待費)の不正受給をする社員への対応方法
質問
電車通勤の申告をして通勤手当を得ている社員がいます。ところが、最近、自転車通勤をしていることが判明しました。
また、私的な飲食費を接待費として偽って申告している社員がいました。
これらの社員に対して、会社は懲戒処分ができますか?
回答 (会社の対応方法)
1.通勤手当の不正受給
通勤手当の不正受給に関しては、①過失により諸手続を怠った場合と②虚偽申告をした場合(作為)又は故意に諸手続を怠った場合(不作為)に分けられます。
①過失により諸手続を怠った場合
企業秩序を乱したとまではいいにくく、直ちに懲戒処分をすることは望ましくありません。
そこで、過払金額を全額返済させ、口頭又は書面による注意程度にとどめるべきでしょう。
また、届出書類に変更事項が発生した場合には直ちに人事部まで届け出るように、日頃から周知徹底しておくべきです。
②故意に諸手続を怠った場合又は虚偽申告をした場合
会社に対する背信の度合いが強く、不正受給の金額や不正の継続期間等によっては、懲戒解雇等の重い処分とせざるを得ない場合もあります。
会社側として黙認していた事実の有無、他の社員の同様の不正の有無、弁解内容等を考慮して、懲戒処分の内容を検討しましょう。
2.接待費の不正受給
刑法上は会社に対する詐欺罪(刑法246条)に該当するおそれがあります。
懲戒するための要件としては、次の①から③が必要です。
①就業規則の規定(「金銭の横領その他刑法に触れるような行為をしたとき」「会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があったとき」等)
②行為があったことを裏付ける証拠(客観的証拠、本人ないし関係者の供述)
③本人の弁明の機会の付与
本人の弁明の機会については、就業規則に規程があるのであれば、必ず付与する必要があります。また、規程がない場合でも後で手続違反を主張されないように、念のため付与するのが無難でしょう。
懲戒処分の程度ですが、事案が軽微(金額が少額かつ反復継続していない)な場合は、せいぜい減給、出勤停止が妥当でしょう。
また、対象となる社員が反省の情を述べ被害金額を返金している、これまで懲戒処分を受けたことがなく日頃の勤務態度もまじめである等の事情があれば、懲戒解雇は避けた方がよい場合も考えられます。
問題社員への対応についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。
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