Q.外国人労働者を雇用する際に雇用契約書や就業規則を翻訳する必要はありますか?
テーマ:外国人労働者を雇用する際の雇用契約書や就業規則の翻訳
質問
製造業を経営している者です。このたび、外国人を初めて雇用することになりました。雇用契約書を締結しようと思いますが、日本語版以外に外国語で翻訳した契約書を準備しないといけないのでしょうか?
就業規則は外国語で翻訳しておかないといけないのでしょうか?
回答
外国人労働者でも、日本国内で就労する限り、労働基準関係法令(労基法、最低賃金法、安全衛生法、労災保険法等)の適用があります。ですので、会社は、外国人労働者と労働契約をするに際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労基法15条) 。ただし、同条も労働条件を外国語で翻訳することまでは求めていません。
また、採用する際に適用される指針として、厚生労働省は、平成19年10月1日付で、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業者が適切に対処するための指針」(以下、「外国人雇用管理指針」といいます。)を定めています。
外国人雇用管理指針自体に法的拘束力はありませんが、せっかく雇用された外国人労働者と信頼関係を築き、雇用の定着を図っていくうえでも、この指針を参考にされるとよいでしょう。
従いまして、法的義務はありませんが、日本語版の労働契約書(又は雇用条件通知書)と就業規則を準備する他に、その外国人が理解できる言語で翻訳したものを準備・交付するのが望ましいです。
翻訳コストとの兼ね合いもあると思いますので、もし全文の翻訳が難しいというのであれば、せめて、賃金を中心とする労働条件(労働契約期間、更新基準、就業場所、始業及び終業時間、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、解雇の事由を含む退職事項等、人事異動の一般条項)についてだけでも、後のトラブル防止のために翻訳されておいた方がよいでしょう。
なお、外国人特定技能者における支援計画に関しては、外国人特定技能者に理解できる言語で翻訳し、その写しを交付することが義務づけられていますので、ご注意ください。
また、翻訳した労働契約書(又は雇用条件通知書)や就業規則等の原本と訳文の内容に齟齬が生じた場合に備えて、正文が日本語版であり外国文は「訳文」にすぎないことを記載し、両者に齟齬がある場合には日本語版が優先することを明記するべきです。
さらに、内容を充分に説明にしたうえ、対象となる外国人には内容を理解した旨の署名をもらっておくとよいでしょう。
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