Q. ローパフォーマー型社員への対応方法
テーマ:ローパフォーマー型社員への対応方法
質問
弊社は商社業を経営しています。
長年経理を担当してくれた者が定年退職することになりました。
そこで、前職で10年近く経理を担当していたAさんを中途採用しました。
ところが、実際に経理を担当してもらったところ、経理の知識・経験が十分ではないことがわかりました。
さらに、金額を間違えたり、請求書の宛名を間違えたりするなどのケアレスミスも多く、注意をしても言い訳ばかりします。
このような社員に対して、会社はどのように対応していけばよいでしょうか?
回答【会社の対応方法】
1.ご相談のようなローパフォーマー型社員に関しては、職務能力が劣悪であり、指導・教育を尽くしたにもかかわらず、改善が見込めない場合に限って、解雇が認められます。
そこで、会社としては、次の順序で対応していくことが考えられます。
①指摘・注意(なるべく速やかに)
対象社員は無意識であることが多く、いきなり叱責すると反発を招く可能性があります。
そこで、できるだけ具体的に指摘・注意するようにしましょう。記録化の点から、できれば書面やメールで指摘・注意するようにしてください。
②指示違反(業務命令違反)
指摘・注意を重ねても改善しない場合、譴責、始末書提出等、軽めの処分を重ねます。
その際、あくまでも対象社員の職務能力を改善するために行うのであり、解雇の前提として行うわけではないことにご注意ください。
③重度の人事措置(最悪の場合、解雇)
それでも対象社員の職務能力が改善しない場合、解雇を検討することになります。
なお、実際には、次のような理由で解雇が無効となるケースが多いでしょう。
・指導・教育を尽くしたという証明ができない
・会社が求めるレベルが明確でないため、職務能力が劣悪と立証できない
・将来にわたって全く改善が見込めないとはいえない
・職務能力が劣っていても、それにより対外的なクレームや取引の停止等、会社に実害が生じていない
そこで、指導・教育を尽くしたという証明をするために、口頭ではなく、反省文、指導書、上司の記録など、日頃から証拠をこまめに残しておくようにしてください。
また、会社が求めるレベルを明確にするために、採用の際に会社が求めるレベルを書面で渡しておきましょう。
なお、対象社員の担当業務がその社員に本当に適しているのか等、「適材適所」について、適宜見直すようにしてください。
2.評価(査定)
経営上、職務能力の低い社員については、他の社員と比べて査定を厳しくする必要があるでしょう。例えば、昇給率において平均的社員よりも低くする、
昇格を平均的社員より遅らせる等の対応が考えられます。
給料を下げたり、降格する等、労働条件を固定的に下げる場合は、就業規則、給与規程、等級規定等の根拠規定が必要となります。
なお、根拠規定がなく、新たに導入する場合は、新設規定が高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要です(東京地決平成8.12.11、アーク証券事件参照)。
問題社員への対応についてお困りの経営者の方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。
企業は、日々、労働組合からの団体交渉の申し入れ、元従業員からの残業代請求、ハラスメント(パワハラ、セクハラ)の訴え、解雇に伴うトラブルなど、あらゆる課題を抱えています。誰にも相談できずに悩まれていらっしゃる経営者の皆様も多いと思いますが、まずは一度、労働問題に強い弁護士にご相談ください。