Q.職場外・私生活上の問題を起こす社員への対応方法

テーマ:職場外・私生活上の問題を起こす社員への対応方法

質問

終業後、会社の同僚同士で酒を飲み、喧嘩になって暴力を振るった社員がいます。

会社としては、どのように対応すればよいでしょうか?

また、休日に飲酒運転をして重大な事故を起こし、逮捕された社員がいた場合や、痴漢行為で逮捕された社員がいた場合には、どのように対応すればよいでしょうか?

 

回答 会社の対応方法

1.職場外・私生活上の行為を理由とする懲戒処分

懲戒処分は、企業秩序の維持のために認められたものですので、職場外・私生活上の行為は、原則として懲戒処分の対象にはなりません。

もっとも、企業の社会的評価が相当程度毀損された場合、あるいは事業活動に相当程度支障をきたした場合に例外的に懲戒処分が認められます(当該行為が懲戒の対象になる旨、就業規則に定められていることが前提です)。

例えば、社名が報道されて会社の名誉が害されたり、逮捕されたため、当該社員が不在となり、他の社員に迷惑がかかった等が考えられるでしょう。

 

2.懲戒処分の程度

懲戒処分の内容を決めるにあたっての判断要素として、当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情を総合的に判断します。

この点、人事院「懲戒処分の指針について(通知)」の処分基準が次のとおり規程されていますので、参考にしてください。

・人を傷害した職員に対して「停職又は減給」

・暴行またはけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったとき「減給または戒告」

 

3.具体的事例

(1)【休日に飲酒運転をして重大な事故を起こして逮捕された場合】

法改正による厳罰化の動きが高まったものの、懲戒解雇処分は慎重にする必要があります。

参考判例として、管理職が酒気帯び運転で物損事故を起こして広く報道された場合で、懲戒免職処分の効力を否定した事例があります(東京高判平成24.8.16)。

(2)【痴漢行為で逮捕された場合】

犯罪を犯せば、必ず懲戒解雇というわけではありません。

事件が新聞報道等によって報道され、会社の名称も明らかになってしまったような事態に至った場合、就業規則における「犯罪など社外非行によって会社の信用・名誉を著しく毀損したとき」等の条項を根拠として懲戒解雇することは有効となる可能性が高いでしょう。

 

4.刑事手続きと会社の対応

(1)最初にすべきこと

事実関係を確認するため、当該社員と連絡をとることを試みる必要があります。

①勾留されている警察署に接見に行きます(事前に接見日時を確認)

②接見が禁止されている場合は、弁護人を通じて、本人の言い分を聞いてください

 

(2)被疑事実を認めているか争っているか

被疑事実を認めている場合、懲戒処分手続きをすすめてもよいでしょう。

但し、事案によっては、懲戒解雇処分の効力が否定されるリスクがありますので、解雇処分をする前に、退職勧奨を検討することもよいでしょう。

解雇処分をするか退職勧奨をするかは、退職金没収条項の適用の可否とのバランスも考慮する必要があります。

 

(3)被疑事実を否認している場合

刑事裁判で無罪となった際、懲戒処分が無効となる可能性が高いです。

そこで、会社の対応方法としては、次のとおりとなります。

①検察官による起訴を待って起訴休職処分にする

②刑事裁判手続が決着するまで休職扱いとしたうえで、刑事裁判での有罪判決確定後に懲戒処分すべき(「社員が犯罪を犯し、有罪判決が確定したとき」)

③社会保険料の負担等の関係で、そこまで結論を待てない場合

退職勧奨を行うか、退職に同意しない場合、起訴された時点でリスクをとって懲戒処分を検討します。

(4)退職金との関係

懲戒解雇の場合、本来なら支給されたであろう退職金を全額不払いとする旨の規定をおいている企業も多いです。

但し、懲戒解雇が有効であるときは必ず退職金はゼロでよいとは限りません。

判例では、全額不支給が認められるのは、長年の勤続による功労を抹消してしまうほどの不信行為があった場合に限られます。

参考判例として、痴漢行為で刑事処罰を受けたことを理由とする懲戒解雇は有効と判示するとともに、退職金の全額不支給は認めず、退職金の3割を支給するよう判示した例があります(東京高判平成15.12.11)。

 

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