Q&A「退職予定者への賞与額の減額の可否」
テーマ:退職予定者への賞与額の減額の可否
質問
弊社には現在,賞与の支給日の後,間もない時期に退職する予定の社員がおります。
弊社としましては,今期の業績が悪化していることもあり,この退職予定者に対する賞与の額を減額したいと考えておりますが,このような対応は,法的に問題はございませんでしょうか。
なお,弊社の就業規則には,社員の業績等を査定して賞与を支給すること,弊社の業績が悪化したときには賞与を減額する場合があることが定められており,この他には賞与に関する定めや特別の合意はございません。
回答
1 会社が社員の賞与を減額することができるか
会社には,法的に賞与の支給義務はございませんが,会社と社員の間でひとたび賞与支給に関する合意が成立すれば,合意内容を変更するには,当該社員の同意が必要となります。
そのため,退職予定者への賞与額の減額が可能か否かは,就業規則等により,賞与の支給に関し,会社と社員の間でどのような内容の合意が成立したか否かによることとなります。
貴社の就業規則は,査定に基づき賞与を支給することを定めるのみで,具体的な支給額の算定基準や算定方法は定めていませんので,賞与の具体的な金額については,貴社に裁量が認められています。
また,貴社の就業規則には,貴社の業績が悪化した場合には,賞与を減額する場合があることも定められています。
以上より,貴社は,貴社の業績悪化等の事情を考慮して,自らの裁量により,社員の賞与額を減額することができます。
2 会社が,退職予定者につき,他の社員より賞与を減額することができるか
一般的に,賞与は,社員のこれまでの労働に対する対価の趣旨のみならず,社員の将来への動機づけの趣旨も含まれると考えられています。
退職予定者に対する賞与には,将来への動機づけの趣旨がなくなるため,通常の社員に比して賞与が低額となること自体は不合理ではございません。
ただし,裁判例の中には,退職予定者の賞与額が通常の社員よりあまりに低いのは不合理であり,減額の限度は2割であると判断したものがございますので,退職予定者の賞与の減額の程度には注意する必要がございます。
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