Q&A「新型コロナウイルス感染症と36協定」

テーマ:新型コロナウイルス感染症と36協定

質問

36協定の有効期限が過ぎてしまったのですが、新型コロナウイルスの影響により事業所の混乱が続いており、新しく36協定が締結できていません。一方、従業員の方には法定時間外労働を行ってもらう必要があります。従業員代表を選出して36協定を締結できるような状況ではないのですが、どうすればよいでしょうか。

 

回答

労働基準法第32条により、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働させる場合や、同法第35条により毎週少なくとも1日又は4週間を通じ4日以上与えることとされている休日に労働させる場合は、いわゆる36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です。

しかし、災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合は、同法第33条第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。同条項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用すべきものとされており,新型コロナウイルスに関連した感染症への対策状況、当該労働の緊急性・必要性などを勘案して個別具体的に判断することになります。

 

新型コロナウイルスは指定感染症に定められていることから、例えば,新型コロナウイルスの感染者の看護等のために労働者が働く場合、人命・公益の保護の観点から急務と考えられますし,新型コロナウイルスの感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、治療に必要な医薬品等を緊急に増産する業務についても、原則として同項の要件に該当するものと考えられます。

もっとも、同条項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの措置を取ったり,やむを得ず月80時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師による面接指導を実施するなど、適切な事後措置を講じる必要があります。

なお、同条項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

 

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