Q&A「新型コロナウイルス感染症の影響による賃金の引下げ」
テーマ:新型コロナウイルス感染症の影響による賃金の引下げ
質問
業績が大幅に落ち込んだため、従業員への賃金を一部カットしたいと考えているのですが、違法になりますか?
回答
(1)賃金引下げの方法
従業員の賃金を引き下げる方法としては,①従業員と賃金の引き下げについて合意する,②就業規則を変更する,③賃金引下げについての労働組合との間で労働協約を締結する,の3つの方法があります。
もっとも,①の方法は,すべての従業員が賃金引下げに賛成するとは限りません。また,③の方法は一定の要件を満たさない限り,労働協約を締結した労働組合に所属する労働者にしか労働協約の効果は及びません。
よって,賃金引下げに反対の労働者についても,賃金の引き下げを行うには,就業規則の賃金規定を変更する必要があります。
(2)就業規則の不利益変更
ア 労働者の合意がある場合
労働者の合意がある場合は,就業規則の不利益変更を行うことができます。もっとも,使用者は労働者よりも強い立場にあるといえるので,労働者に合意を強制したと判断されないために,事前に変更内容を説明して書面による合意書を残しておくべきです。
イ 労働者の合意がない場合
労働者の合意がない場合でも,就業規則の不利益変更は可能です。この場合,変更の合理性が認められる必要があります。変更の合理性判断の考慮要素は,労働契約法10条に定めがあり,①労働者の受ける不利益の程度,②労働条件の変更の必要性,③変更後の就業規則の内容の相当性,④労働組合等との交渉の状況,⑤その他の就業規則の変更に係る事情,といった要素を総合考慮して判断します。
ウ 就業規則変更のポイント
このように,賃金引下げには,変更の合理性が認められる必要があります。合理性が認められるかは,個別事情によりますが,一般的な対応として賃金の引下げ幅は10%以内,特定層だけでなく従業員全体で賃金を引き下げる,段階的に引き下げる等の経過措置をとる,変更までに出来る限り多くの従業員からの合意を得る,等を行うことで変更の合理性が認められやすくなります。
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