協調性のない社員の解雇することができるか
1 協調性のない社員の解雇
企業では,社員が同じ職場で仕事をこなし,また,社員数人がチームとしてひとつの仕事に取り組むこと等もあるため,社員の協調性は重要です。他の社員への理不尽な叱責,職場内の雰囲気を悪くするような言動等,協調性のない社員の存在により,業務に支障が生じる場合も少なくありません。企業としましても,社員の協調性に欠ける言動への対処には苦慮されていることでしょう。
それでは,企業は,このような協調性に欠ける社員を解雇することができるのでしょうか。従業員を解雇するには,就業規則上の解雇事由が存在すること,解雇の客観的合理的理由,社会通念上の相当性が認められることが必要です。そのため,協調性に欠ける社員を解雇する場合も,この3つの要件を充足していなければなりません。
2 解雇の客観的合理的理由
協調性のない社員について解雇の客観的合理的理由が認められるには,①当該社員が協調性を欠く問題行為を繰り返し行っていること,②会社が当該社員に対し,教育,指導等を実施したにもかかわらず,当該社員の態度が改善されないこと,③当該社員の問題行為により,業務に支障が生じていることを要すると考えられます。そのため,「笑顔が少ない」「挨拶の声が小さい」といったレベルの協調性の欠如では,当該社員を解雇することはできないでしょう。
また,社員に協調性の観点から問題ある言動があった場合には,その都度適切な指導を行うとともに,指導書等書面に,問題ある言動の内容,指導内容を具体的に記載して,証拠として残しておくことが重要です。
3 解雇の社会通念上の相当性
協調性のない社員について解雇の社会通念上の相当性が認められるには,他の社員に対する処分と比べて均衡を欠いていないことを要すると考えられます。例えば,当該社員よりも協調性に欠ける言動の程度が深刻である他の社員に対しては,何の処分もしていないにもかかわらず,当該社員に対してのみ解雇することは,解雇の相当性が認められないといえるでしょう。
また,解雇の社会通念上の相当性の判断においては,当該社員を解雇するに至る前に,できる限りの他の処分等を試みたことも重要な事情となります。例えば,複数の事業所・部署がある企業では,まずは当該社員を配置転換することで,当該社員の言動に改善が見られないか,試みる必要があるでしょう。加えて,解雇処分を下す前に,当該社員に対して何度か退職勧奨を実施し,できる限り自主退職を促すことが望ましいです。
4 まとめ
以上のとおり,協調性のない社員への対応には,解雇できるか否か,解雇までにとるべきプロセス等,注意すべき点が多くあります。そのため,社員による協調性のない言動が社内で問題となった場合には,すみやかに労働問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
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