非違行為を行う問題社員を辞めさせる方法

1 非違行為を行う従業員への対処

法令や就業規則等に違反する行為は、「非違行為」と呼ばれます。具体的には、以下のような行為を「非違行為」といいます。

①従業員が他の従業員に対してセクハラ行為を行った。
②上司からの指導に従おうとせず、勤務態度不良
③パワハラを繰り返しており、周囲の従業員を委縮させている。

従業員の中には、残念ながら「非違行為」を行う者が一定数存在し、他の従業員に対する悪影響もあることから、「非違行為」を繰り返す従業員には辞めてもらいたいと思われる企業様もいらっしゃるかと思います。しかし、現在の日本では、従業員が「非違行為」を行ったからといって、安易に解雇できないのが現実です。

2 解雇のハードルは極めて高い

従業員の普通解雇については、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利を濫用したものとして解雇が無効となります。一見、抽象的な基準であり、どの程度の理由で解雇が認められるのか分かりにくいと思いますが、判例が考える解雇が合法となる基準は極めて厳しく、実際に解雇が有効となる事例はごく稀です。
解雇のハードルを示す一例として、高知放送事件という裁判例があります。この事案では、アナウンサーが2週間の間に2度寝坊により遅刻してニュースを定時に放送できないという事態が発生しました。さらに、アナウンサーが2度目の放送事故について事故報告していなかったため、後日、上司が事故報告書の提出を求めたところ、事実と異なる内容の報告書が提出されました。会社が、これらの非違行為を理由にアナウンサーを普通解雇したところ、解雇の有効性が争われました。
裁判所は、寝過ごしという過失行為によるものであり悪意でも故意でもないこと、寝過ごしによりニュースの空白時間はさほど長時間ではないこと、会社側が朝のニュース放送の万全を期すべき何らの措置も講じていなかったこと等から、解雇を無効と判断しました。
以上の裁判例のように、従業員が短期間に「非違行為」を繰り返したとしても必ず解雇が有効になるわけではありません。むしろ、解雇が有効となるのは、重大な違反行為を行ったうえに今後改善の見込みもないような例外的な事例だけなのです。実際に解雇する場合には、専門家による慎重な判断が必要になります。

3 実効的なのは退職勧奨

安易に解雇の手段を取ることは出来ないとして、従業員を辞めさせるために他にどのような方法が考えられるでしょうか。
実効的な手段としては、退職勧奨が考えられます。退職勧奨とは、会社から従業員に対し自主的に退職するよう働きかけることです。退職勧奨に従業員が同意して退職すれば、退職の有効性が認められます。もっとも、退職勧奨は任意に退職を促す行為ですので、退職を強要するようなことは出来ません。従業員に退職勧奨を行う際は、後日、退職を強要されたと言われないように注意して進める必要があります
退職勧奨の流れとして、まず従業員との面談を行います。面談に立ち会う会社側担当者は数名程度がよいでしょう。人数が多すぎると従業員を威圧したと判断されるおそれがありますし、一人だと面談でのやり取りを歪曲されるおそれがあります。また、面談時間が長くなりすぎたり、面談回数が多くなりすぎたりしないように注意しましょう。面談があまりに長時間・多数回に及ぶと、たとえ退職の合意を得ることが出来ても、退職への合意を強要されたと主張され無効になる可能性があります。
面談では、従業員への退職条件を提示します。条件としては、退職金の上乗せや転職先の紹介といったことを提示するのが一般的です。条件について折り合いがつけば、従業員の退職に関する合意書を作成することになります。合意書には、退職日や退職金の金額・支払時期等を記載するだけでなく、必要に応じて秘密保持義務や競業避止義務について記載する場合もあります。

4 最後に

以上のとおり、従業員を辞めさせるうえで最も有効なのは、退職勧奨です。もっとも、退職勧奨を行う際も、あとで有効性が問題とならないように、面談の進め方、合意書の記載内容には注意が必要です。問題ある従業員にお悩みの方は、是非、専門家にご相談のうえで対応を検討されることをおすすめします。

 

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