無断欠勤を続ける問題社員を辞めさせる方法
第1 はじめに
「無断欠勤を続ける問題社員を辞めさせたい」というご相談をしばしば受けます。
このような問題社員を辞めさせたい場合、どうすればよいでしょうか。無断欠勤している労働者が悪いので、安易に解雇してしまっても問題ないでしょうか。この記事では、無断欠勤を続ける問題社員を辞めさせる方法、及びその注意点について解説します。
第2 解雇の基礎知識
有効に解雇するためには、①客観的で合理的な理由と、②社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。これらを欠く解雇は無効です。
解雇に納得できない労働者は、解雇の有効性を争って裁判を起こしてくる可能性があります。裁判において、上記①②を満たしていることは、会社が立証しなければなりません。
したがって、解雇する場合は、裁判になっても負けないように、裁判で提出できるような証拠を揃えておく必要があります。
第3 どれくらいの無断欠勤期間が必要か
1日無断欠勤しただけで解雇してしまうと、その解雇は無効です。このあたりは、皆様のイメージ通りではないでしょうか。
では、どれくらいの無断欠勤期間があれば、有効な解雇理由にあるでしょうか。これまでの裁判例を踏まえると、連続して2週間以上の無断欠勤というのが1つの目安です。厚労省が定める「解雇予告除外認定基準」でも、2週間以上の無断欠勤が除外認定基準として挙げられています。
したがって、無断欠勤が2週間以上続いた場合には、解雇が選択肢に入ってくるとお考えいただければよいでしょう。
第4 無断欠勤が発生した場合の対応
では、労働者が無断欠勤した場合、そのまま2週間放置して、2週間経過後にいきなり解雇すれば問題ないでしょうか。残念ながら、裁判所はそんなに甘くありません。
裁判所は、使用者側に対し、改善の機会を与えたのか、やれることはすべてやったのかを問うてきます。使用者としては、改善の機会を与えたこと等を、証拠付きで説明できるようにしておく必要があります。
具体的には、無断欠勤が発生した場合、出勤命令を出してください。この出勤命令は、証拠に残るように、書面、メール、ショートメール等の記録に残る方法で行うようにしてください。電話等の口頭で行った場合、証拠に残らず、後で裁判になったときに苦労することになります。電話をするのがダメというわけではありませんが、電話で出勤命令を出した場合は、電話後すぐにメール等でも送るようにしてください。
では、そもそも労働者と連絡すらつかない場合はどうでしょうか。この場合でも、自宅訪問、電話、メール、最近であればSlackやLINE等、考えられるすべての方法で、労働者との連絡を試みてください。上述の通り、裁判所は、使用者としてやれることはすべてやったのか、を問うてきます。
第5 解雇する場合の注意点
以上の取組みを行っても、無断欠勤状態が改善されない場合は、いよいよ労働者に解雇通知を送って解雇することになります。この解雇通知は、証拠化のために、内容証明郵便によって行った方がよいでしょう。
労働者から解雇理由を尋ねられた場合、使用者は解雇理由を通知する義務を負います。そのため、使用者としては、解雇通知を送る前に、解雇理由を整理しておく必要があります。具体的には、いつからいつまで無断欠勤したのか、出勤命令をいつどのような方法で出したのか、それに対する反応はどうだったのか等です。
第6 最後に
以上の通り、無断欠勤を続ける問題社員に対してであっても、解雇する場合には細心の注意が必要です。安易に解雇してしまうと、後日、解雇無効を主張され、裁判で負けることになります。
無断欠勤を続ける問題社員の解雇を検討されている場合は、ぜひ解雇前に一度、労務問題に詳しい弁護士へご相談ください。
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