リストラの手順
1 リストラとは
リストラとは、事業を再構築すること(リストラクチャリング)のことですが、日本では人員削減のための解雇の意味で用いられることが多いです。
2 人員削減のメリットとデメリット
会社が人員を削減するメリットは、言うまでもなく人件費を減らすことによる収支の改善です。
これに対し、人員削減のデメリットは、希望退職者に対する退職金の割り増し、整理解雇や雇止めによる労使紛争の発生です。リストラに際しては、特にこの労使紛争の発生リスクをいかに少なくするかに注意することが重要です。
3 リストラの手順と検討事項
(1) 希望退職者の募集
労使紛争を発生させないためには、円満に退職してもらうことが最も大切です。
希望退職者の募集は、退職金の割り増し等の優遇措置を示して退職者を募集し、合意により雇用関係を終了させることを目指します。合意による退職であるため、労使紛争が発生するリスクはほとんどないでしょう。
他方で、退職金の割り増しによる金銭負担の増加や、是非とも会社に残って欲しい有能な社員が退職してしまう可能性などもあり、注意が必要です。
(2) 退職勧奨
希望退職者を募集しても、希望者が必要な人数に達しなかった場合や、有能な社員が退職してしまうことを防ぎたい場合は、個別に退職勧奨を行うことになります。
退職勧奨に応じてもらった場合も、会社との合意により雇用関係が終了することになるため、労使紛争が発生するリスクはほとんどないと言えるでしょう。
退職勧奨は、任意の退職を促すものであるため、退職勧奨自体は違法ではありませんが、対象者が退職を拒絶しているにもかかわらず、執拗に退職勧奨を繰り返したりすると、違法と評価されることがありますので注意が必要です。
(3) 整理解雇
ア 普通解雇・懲戒解雇との違い
希望退職者の募集、退職勧奨によっても目標とする人件費の減額に達しない場合、整理解雇を検討することになります。
整理解雇と普通解雇・懲戒解雇との大きな違いは、能力不足や懲戒事由など、普通解雇・懲戒解雇には従業員に何某かの責任があるのに対し、整理解雇は会社の都合によるものであり従業員に非難されるべき事情がないことです。
このため、整理解雇が認められるためには、以下の4要素を満たす必要があります。
イ 4要素
① 人員削減の必要性
解雇しなければ倒産を免れないというまでの事情は必要ありませんが、会社は、人員を削減することに合理的な理由があることを説明できなければなりません。
② 解雇回避努力
解雇はあくまでも最終手段であり、新規採用の停止、残業時間の削減、配置転換等、解雇以外の方法により経費を削減する努力をしたことが必要です。上記の希望退職者の募集も解雇回避努力をしたことの一つの事情になります。
③ 人選の合理性
解雇の対象となった従業員をどのように選定したのかが問題になります。恣意的な人選が許されないのはもちろんであり、合理性のある客観的な基準により選定したことを説明できる必要があります。
④ 手続の相当性
解雇の対象となった従業員に対し、丁寧な説明をする必要があります。労働組合がある場合は、労働組合と協議することも必要です。この点をおろそかにして、裁判所が整理解雇を無効とする事例も多いため、充分に注意する必要があります。
4 まとめ
リストラは、手順を誤ると労使紛争が発生するリスクがとても高くなります。リストラの際は、労働問題に詳しい弁護士に相談しながら進めることをお勧めいたします。
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