労働組合からの不当な要求に対する対応例

 

1.労働組合からの不当な要求に対する対応例

労働組合から不当な要求をされた場合の対応例についてご紹介します。

① 「社長を出席させろ」との要求に対して

対応例)「応じることはできません。団体交渉事項について会社から権限を一任されている〇〇が参加いたします。」

社長が団体交渉に参加しなければならない法的義務はありません。そのため、社長から権限を委任された者が参加していれば、不当労働行為にはなりません。

 

② 参加者が罵詈雑言や野次を飛ばしたり、暴力をふるってきたりした場合

対応例)「個人の人格を攻撃するような発言や暴力は慎んでください。そのような行為が今後とも続くようであれば、交渉を打ち切らせてもらいます。」

団体交渉という憲法で保障された権利であり、発言の自由も保障されていますが、社会的相当性を超えた暴言や暴力は当然許されません。そのため、労働組合側の団体交渉態度が暴力的であり、社会的相当性を超える場合には、団体交渉を打ち切ることが可能です。

そこで、過去の暴力行為の陳謝や将来において暴力を行使しない旨の保証のないかぎり、使用者が、その労働組合又はその団体との団体交渉を拒否することは、正当の理由があるものとして不当労働行為にはあたらないとされています。

 

③ 団体交渉義務を負わない事項に関する交渉要求に対して

対応例)「その事項は団体交渉義務の範囲内ではないので、話し合いには応じられません。」

会社が団体交渉を行わなければならない事項、いわゆる「義務的団交事項」は、「従業員の待遇ないし労働条件と密接に関連性を有する事項」あるいは「労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」をいうと考えられています。会社は何でもかんでも交渉に応じなければならないわけではありません。

なお、労働組合の要求内容が義務的団交事項に該当するか否かの判断が難しいこともあります。そのため、団体交渉の申入れがあった場合には早期に弁護士に相談し、今後の対応方針を決定する必要があります。

 

④ 「要求を受け入れろ」との一方的な要求に対して

対応例)「会社はそのような法的義務を負っていませんので、お断りします。」

会社はあくまで「誠実に団体交渉を行う義務」を負うのであって、使用者には組合の要求を容れたり、それに対し譲歩したりする義務まではありません。

また、組合から便宜供与を求められる場合もあります。会社から労働組合からの要求は、労働組合の組織力を高め、会社に対する交渉力を増強することを目的としているので、便宜供与を与える場合には、慎重な判断が必要となります。

会社掲示板の貸与、組合掲示板の新設、労働組合事務所の貸与などの便宜供与について、いずれも、与えるかいなかは、会社の自由な裁量に任されていますので、応じる義務は必ずしもありません。ただし、一度与えた便宜供与を、理由なく一方的に中止したり、複数の組合に対する便宜供与の与え方を差別したりする取扱いは、不当労働行為に当たる可能性の高い危険な行為です。

 

⑤ 事前に連絡されていない事項についての質問に対して

対応例)「この場ではお答えできません。持ち帰って検討します。」

事前に組合側から内容を知らされない質問については持ち帰って検討することも許されます。ただし、当然想定されるはずの質問に対する使用者側から具体的対応の不足は、誠実交渉義務に反し不当労働行為と評価される場合もありますので注意が必要です。

 

⑥ 同じ質問に対して

対応例)「この事項については前回の団体交渉で回答したとおりです。」

団体交渉に応じる義務があるといえども、永遠に団体交渉を行い続けなければならないわけではありません。団体交渉事項について、十分な協議を尽くしたけれども、譲歩の余地がなく、これ以上議論を行っても平行線であることが明らかとなった場合は、使用者側から団体交渉を打ち切ることが可能です。

ただし、交渉の行き詰まりによる交渉の打ち切り後でも、事情の変化が生じた場合は、使用者は交渉再開に応じる義務があるので注意が必要です。

 

 

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