団体交渉の進め方
1.団体交渉の基本的な進め方(第1回目の団体交渉時の注意点)
具体的に団体交渉はどのように進めていけばよいのでしょうか。
交渉事は何事も最初が肝心です。組合側も第1回目の団体交渉を非常に重視しています。ですので、第1回目の団体交渉ですが、「基本的には守る、失点を防ぐ」姿勢が大切です。
第1回団体交渉の場で、議題について必ず決定しなければならないわけではありません。労働組合法は、組合と誠実に団体交渉を行うこと(誠実交渉義務といいます。)を要求していますが、合意する義務までは課していません。
いつも通り接すればよく、けんか腰である必要もありません。緊急性のある議題を除き、労働組合の要求を聞くにとどめてもよいでしょう。
いずれにせよ、冷静に対応することが大切です。第1回目の団体交渉から、「検討する」「確認する」「持ち帰る」等といった言葉をうまく多用して、対応されるとよいでしょう。
2.団体交渉の際の注意点
団体交渉の終了時に、組合から「議事録」「覚書」などの書面にサインを求めてくることがあります。しかしながら、サインをしてしまいますと、労働協約としての意味を持ってくることがありますので、絶対にその場でサインをせずに持ち帰るようにしてください。
また、次の団体交渉の日程をその場で決めようとしてきますが、団体交渉の会場がとれるかわかりませんので、その場では決めず、後日(1~2日後程度)候補日を知らせる方法でよいでしょう。
団体交渉は反対されても録音しましょう。録音の方法ですが、堂々と机の上にICレコーダーを出して録音すればよいでしょう。団体交渉後に社内での議事録を作成するためにも有用です。荒れた団体交渉の場合の証明にもなります。議事録自体は、「議題、双方の主張、次回までの宿題」といった内容を箇条書きで作成しておけば十分です。
逆に、組合側から団体交渉の様子をビデオで撮影しようとするケースもあります。HPにアップするために録画するおそれがありますし、肖像権の問題もありますので、お断りするようにしてください。
回答する際は、答えられる分だけで結構ですので、事前に回答書を必ず作成して団体交渉に臨むようにしてください。回答内容がぶれませんし、多少言い間違えても、最終的には回答書の内容のとおりですといえばよいからです。
3.団体交渉の時間
団体交渉の時間ですが、2時間程度が相場といわれています。ですので、会場は2時間に少し余裕のある程度の時間を予約するとよいです。ホテルの会議室の場合等、時間になったら、係員に声をかけてもらうようにお願いしておくとよいでしょう。
会社の方から1時間、1時間半程度で打ち切るのは、誠実交渉義務違反と言われる恐れがありますので、お勧めしません。
議題に緊急性がある場合を除き、団体交渉の時間が3時間以上になる場合は、それ以上の要求があれば文書でもらうようにして、それ以上の交渉は断ってもよいでしょう。
労働組合対策についてお困りの方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。
以 上
- 争議行為への損害賠償請求
- 労働組合(ユニオン)が街宣活動をしている場合の対応方法
- 労働組合からの不当な要求に対する対応例
- 労働組合からの団体交渉の申し入れから解決までを弁護士が解説
- 労働組合から未払い残業代について団体交渉を申し込まれた場合の対処法
- 労働組合との団体交渉で弁護士を入れることのメリット
- 労働組合との団体交渉で議事録の作成・録音をする必要性
- 労働組合との団体交渉と使用者の誠実交渉義務
- 労働組合との団体交渉において在籍したまま残業代を請求された場合
- 労働組合対策でやってはいけない対応
- 労組法上の労働組合ではない団体からの団体交渉について
- 合同労組・地域ユニオンへの対応
- 合意が成立する見込みがない場合の誠実交渉命令
- 団体交渉の各議題(テーマ)と対応
- 団体交渉の進め方
- 団体交渉を申し入れられたら
- 団体交渉当日までにやるべきこと
- 就業時間中に労働組合の活動を行った組合員を懲戒処分にできるのか
- 組合が社内に複数存在する場合