労働組合対策でやってはいけない対応
1.労働三権
憲法は28条において、労働三権を認めております。労働三権とは、①団結権、②団体交渉権、③団体行動権です。
③団体行動権は、「正当な争議行為」について、刑事免責、民事免責を認めています。ですので、あくまで正当な争議行為であることが必要であり、不当な争議行為についてまで、許す必要はありません。
2.労働組合法の考え方
使用者は、労働組合の要求に対して譲歩する義務はありません。ただし、誠実に団体交渉に応じる義務(「誠実交渉義務」といいます)が課されています。誠実交渉義務は、非常に強い義務であり、使用者に厳しい義務でもあります。労働組合も団体交渉を非常に重んじています。
その一方で、施設管理権等の使用者の財産権や人事権、業務命令権については、使用者の裁量を尊重しています。
3.不当労働行為
労働組合法は、憲法28条における団結権等の保障を実効的にするため、労働組合法第7条において、不当労働行為を禁止しています。
基本的で一般的な不当労働行為の禁止類型は、次のとおりです。
・「第7条1号 不利益取扱の禁止」
・「第7条2号 団体交渉拒否の禁止」
・「第7条3号 支配介入の禁止」
例として、組合幹部の買収、脱退干渉、組合を通さない交渉等があげられます。
4.便宜供与
便宜供与とは、会社施設や掲示板等を労働組合に貸すことをいいます。
使用者には施設管理権などの財産権がありますので、労働組合に会社施設や掲示板を貸す義務はありません。労働組合の費用で掲示板を出す等と言われても、貸す義務はありません。むしろ、一度それを認めると、撤去する際、組合の財産である掲示板を撤去することが難しくなります。また、貸した場合でも、会社内労組と掲示板を貸して、合同労組に貸さないとなると、トラブルになるので、平等な扱いに配慮しなければなりません。
労働組合の方で、掲示板等がないことで組合活動に支障が出る等の特段の事情を立証しなければなりません。また、労働組合は「どの会社も労働組合に掲示版を使わせている」等とよくいってきますが、労働組合の言葉に惑わされないようにしてください。
便宜供与については、断るものと認めるものをきちんと分けて対応することが肝要です。
5.団体交渉でやってはいけない対応
団体交渉で気を付けなければならないこと、それは一度できた既成事実はルール化してしまうということです。
たとえば、団体交渉の場所、時間、出席者などは事実上、既成事実が優先されます。また、会社施設内の組合活動も、会社が抗議、警告、懲戒等を行わないと会社が黙認したと受け取られるおそれがあります。
組合活動は、あくまで就業時間外、会社施設外、会社管理の物を使用しないで行うことが原則です。組合も会社の出方をみている場合がありますので、会社の毅然とした対応が大切でしょう。
労働組合対策についてお困りの方は、ぜひ一度労務問題に詳しい弁護士にご相談ください。
以 上
- 争議行為への損害賠償請求
- 労働組合(ユニオン)が街宣活動をしている場合の対応方法
- 労働組合からの不当な要求に対する対応例
- 労働組合からの団体交渉の申し入れから解決までを弁護士が解説
- 労働組合から未払い残業代について団体交渉を申し込まれた場合の対処法
- 労働組合との団体交渉で弁護士を入れることのメリット
- 労働組合との団体交渉で議事録の作成・録音をする必要性
- 労働組合との団体交渉と使用者の誠実交渉義務
- 労働組合との団体交渉において在籍したまま残業代を請求された場合
- 労働組合対策でやってはいけない対応
- 労組法上の労働組合ではない団体からの団体交渉について
- 合同労組・地域ユニオンへの対応
- 合意が成立する見込みがない場合の誠実交渉命令
- 団体交渉の各議題(テーマ)と対応
- 団体交渉の進め方
- 団体交渉を申し入れられたら
- 団体交渉当日までにやるべきこと
- 就業時間中に労働組合の活動を行った組合員を懲戒処分にできるのか
- 組合が社内に複数存在する場合