Q.日本語の作業手順書だけの用意では、労災事故で安全配慮義務違反を問われてしまうのでしょうか?

テーマ:外国人労働者特有の安全配慮義務と労災事故への対応方法

質問

当社の工場では、多くの外国人労働者が働いています。最近、そのうちの1人が、業務中の事故により怪我をしました。ところが、その外国人が弁護士を介して、「怪我をしたのは、日本語で書かれた作業手順が理解できな かったからであり、会社には安全配慮義務違反による賠償責任がある」と主張してきました。

当社に賠償責任はあるのでしょうか。また、今後、再発防止のために会社が準備しておくべきことはありますか?

 

回答

外国人労働者も会社とは労働契約関係にありますので、会社は当然、安全配慮義務を負います。安全配慮義務の内容ですが、社員に安全教育を行い、または危険を回避するための適切な注意や作業管理を行うことです。

この点、厚労省が作成した平成19年10月1日付「外国人雇用管理指針」でも、「①安全衛生教育の実施、②労働災害防止のための日本語教育等の実施、③労働災害防止に関する標識、掲示等、④健康診断の実施等、⑤健康指導及び健康相談の実施、⑥労働安全衛生法等関係法令の周知」を要求しています。

また、近時の裁判例において、安全配慮義務として、外国人労働者への安全教育は、「作業手順や注意事項及び事故発生時における対応等について、外国人労働者の理解できる言語で記載した書面を交付するか、外国人労働者の理解できる言語で説明した上、その内容・意味を正確に理解していることを確認」したり、「十分に理解しているか確認するために、指導したとおり安全に作業を行っているか監督できる体制を整える」といったことを要求しています(名古屋地裁平成25年2月7日判決等参照)。

したがって、会社が外国人労働者の理解できる言語、方法により、安全教育をする必要があり、これらの措置をとっていない場合には、安全配慮義務違反を理由に損害賠償責任を負う可能性があります。

そこで、会社が、安全配慮義務違反を理由に賠償責任を問われないためには、外国人労働者にも理解できる言語で理解が行き届くように教育するべきでしょう。その際、教育をするにあたっては、言葉、図、イラスト等を使って、理解を促すべきです。
また、研修や指導をしたことを、必ず書面で記録に残しておきましょう。このようにすることで、損害賠償を請求された場合に反論・反証することができ、貴社を守ることができます。

なお、外国人労働者に労災事故が生じた場合には、まず、本人や周囲の者に対し事実関係の聴取をしたり、診断書の提出を要求したり、労働基準監督署への届出等を行う必要があります。

外国人労働者の問題についてお悩みの経営者の方は、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

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