不当解雇を訴えられてしまった

1 不当解雇とは

不当解雇とは,労働基準法等の法律や就業規則上のルールに違反した解雇のことをいいます。「日本は解雇のハードルが高い」とよく言われますが,そのハードルを越えられていない解雇は,不当解雇にあたります。

 

2 不当解雇のリスク

不当解雇は,法律上,無効になります。解雇が無効になるとはどういうことでしょうか。

 

(1)従業員を復職させなければならない

解雇が無効ということは,雇用関係が現在も継続しているということです。したがって,会社は,従業員を復職させなければなりません。当然,今後も給料を支払い続けなければなりません。

(2)解雇期間中の給料を支払わなければならない(バックペイ)

会社と従業員が解雇の有効性をめぐって争っていた期間も,雇用関係は継続していたことになります。したがって,会社は,解雇後復職までの期間の給料も,遡って支払わなければなりません。これを,バックペイといいます。

たとえば,解雇してから半年後に,従業員が「不当解雇だ」と主張して裁判を起こし,1年間裁判で戦って解雇が無効だと判断された場合,会社は,その1年半分の給料を支払わなければなりません。その間,従業員はもちろん労働しておらず,会社に何の利益も生み出していませんが,それでもこれだけの給料を支払わなければならないのです。

(3)付加金を支払わなければならない可能性

解雇の有効性をめぐって裁判になり,裁判で解雇が無効だと判断されると,裁判所が会社に対し,「付加金」の支払を命じる場合があります。「付加金」とは,給料を支払っていない会社に対するペナルティのようなものです。バックペイとは別に,最大で未払賃金額と同等の「付加金」を労働者に対して支払わなければなりません。

先ほどの例で言うと,会社は,1年半分のバックペイのほか,これと同額の付加金を労働者に支払わなければならないということです。

 

3 不当解雇を主張されたときに、どのように対処すべきか

従業員から不当解雇を主張された場合,会社としては,解雇の有効性を主張し,不当解雇ではないと反論していくことになります。解雇時に解雇理由通知書を作成していると思いますので,その解雇理由をもう一度見直してみてください。

しかし,そうは言っても,解雇が有効か無効かを判断するのは難しいと思いますので,まずは弁護士に相談されるのが良いと思います。

有効な解雇である場合,弁護士がきちんと主張と証拠まとめて反論し,従業員を説得することになります。

仮に無効な解雇である場合は,できる限り早急に解決し,バックペイの金額を少しでも低くする必要があります。また,その従業員の復職を阻止する必要もあります。会社の対応が遅れると,従業員が裁判を起こしてきますので,早急な解決が難しくなります。

解雇が有効か無効か微妙な場合は,裁判を起こされる前に示談で解決した方がリスク管理として適切といえることもあります。

 

4 不当解雇の判例

1 高知放送事件

2度の寝坊で生放送に遅刻し,放送事故を起こしたアナウンサーを解雇した事案で,その解雇は無効と判断されました。①放送事故の責任をアナウンサー1人に押し付けるのは適切でなく,会社として放送事故防止のための対策を講じるべきであること,②そのアナウンサーを起こす担当だった別のスタッフも2度とも寝坊していること,などが考慮されました。

2 ブルームバーグ・エル・ピー事件

勤務能力の低下を理由に解雇する場合は,

①その勤務能力の低下が労働契約を継続できないほど重大なものかどうか

②使用者側がその労働者に対して改善矯正策を講じたにもかかわらず改善されず,今後も改善の見込みがないといえるか

等を考慮して解雇の有効性を判断すべきと述べました。

3 東洋酸素事件

会社の経営不振を理由とするいわゆる「整理解雇」の場合は,

①人員削減の必要性

②解雇回避努力を尽くしたか否か

③人選の合理性

④手続の相当性

の4要素を考慮し,通常の解雇よりも解雇の有効性を厳格に判断すると述べました。

 

5 不当解雇について弁護士に相談する意味/メリット

上記第3で述べた通り,不当解雇を主張された場合は,「裁判になったらどうなるか?」という見通しをもって初期対応を行うことが重要です。不当解雇について早めに弁護士に相談することで,的確な初期対応が可能となり,迅速かつ適切な解決が可能となります。

また,可能であれば,解雇をする前に一度ご相談されることをおすすめします。第2で述べた通り,不当解雇をしてしまった場合,会社のリスクは非常に大きいです。事前に弁護士に相談し,そもそも不当解雇を回避することで,不要なリスクを負わずに済みます。解雇をお考えの方は,ぜひ事前に一度ご相談ください。

 

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